604-DCN-12 カストロに逢いたい!

27日キューバ 午前。
 
 思わず1日時間ができてしまった。さて何をしよう。

 !そうだ「カピタリオの中」に行こう。


 

昨日の夜中、スイス人タトゥアーティストに訊ねた、ハバナ観
光で何処が一番よかったですか?の答えである。

 カピタリオ=旧国会議事堂のことで国立ガルシア・ロルカ劇場
と並んでハバナ旧市街地の顔とも言える建物、1929年の建設でア
メリカの国会議事堂そっくりなのだが、それもそのはず、設計者
が本国と同じなのだ。(当時キューバはアメリカのコントロール
下にあった)

 そんなわけで、さっそく足を伸ばしてみた。宿泊のホテルから
歩いて2分。

 あっもう着いちゃったという距離だ。

 裏手から3ペソを払い入場する。

 見上げて驚いた。全面大理石を贅沢に使った広々とした空間。
少しひんやりとした空気と自然光の柔らかな明るさ。凛とした緊
張感がある。天井が高いからだろうか、古い建物にありがちな埃
っぽさや黴臭さはない。

 ファインダーを覗いて身震いがした。裸眼よりも広角のレンズ
で切り取った建物の一部分が構図として切り取られ存在感を主張
する。

 完璧な演奏にグルーブが混合されたJAZZの名演に出会った
ように心を討たれ少し遅れて波のように鳥肌が身体を駆け巡る。

 並の感動と違うのは、鳥肌がなかなか引かないことでわかる。

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 お隣の国立ガルシア・ロルカ劇場の裏路地にバレリーナが1000
人以上溢れていた。(キューバのバレエは世界でも高く評価され
ていて、優秀なバレリーナをたくさん生み出している)

 バレーコンテストの出番を待っているそうだ。

 こんな瞬間に出会えるから街歩きはやめられない。車で移動し
てたら出会えない。

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 飲み納めだと思い。
「フロリディータ」でフローズンダイキリ。
「La Boodeguita Medio」でモヒートとコィーバ。

 やっぱり美味い。

 その後、海沿いのフリーマーケットでお土産を物色。

 すっかり夕方だ。西の空がオレンジに染まってきた。

 しかし気がつくとホテルから半径1km程度しか移動してない
徒歩ということもあるけれど。それくらいハバナ旧市街は密度が
濃いのだ。

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 ホテルの近くで4人組のアカペラグループと出会う。

 キューバの第2国歌とまで言われる名曲「Guantanamera」を
ハーモニーで聞かせてくれた。

 とにかくハバナに入ってから「Guantanamera」を聴かない日は
ないほどで、すっかり耳タコになってしまった。ほんとに名曲だ。
 一旦ホテルに戻り屋上のレストランでピザを食べる。

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 部屋に戻り、忘れないうちにメルマガの原稿を書き、荷物をま
とめる。少しだけ開けた窓から「イパネマの娘」のジャズアレン
ジが聞こえる。

 この4日目思い返してみるとスピーカーからの音楽は聞いてな
くて全部生演奏だと気がついた。

 ほんと贅沢だ。

 ひと段落して時計を見ると23時。
 ハバナ最後の夜、大いに飲もうと部屋を出た。

 ロビーを抜け、ホテルの玄関を出ようとすると、セキュリティ
ーが走ってきて「セニョール!」と声を掛けられた。

「こんな時間に外に出ては危ないですぞ!」と言ってるらしい。

 昨日もその前も深夜うろついてた僕に何を言ってやがると思っ
たが、その剣幕に、やっぱり危ないのかもなとホテルのバーに引
き下がる。

 それにしても、はじめてのスペイン語圏ですっかり「セニョー
ル」に「セニョリータ」「グラシアス」「アミーゴ」にハマって
しまった。なにせ今まで「セニョリータ」なんて言葉は知ってて
も口から出なかった言葉だからね。新しい回路が通電されたよう
で嬉しい。

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深夜

 ホテルのバーカウンターに腰を降ろす。
 2席あけて左に4人組の男女がスペイン語で盛り上がっている。

 僕はダイキリを注文しコィーバに火をつけた。
 この2日で10本は吸った。

 30分もしないで4人のうち3人が帰り1人残った。
 この男飲み足りないのだろう。

「ハイ、ハポン」陽気な笑顔で
 男は僕の横の席に移動してきた。

 男の名はヘサス(Jesus)32歳。15杯もモヒートを飲んで
ご機嫌らしい。

 元彼女とその家族と旅行でハバナに来たという。

 聞けば、縁りを戻したい風でもない。「親友だからさ」と緩い
答えが帰ってきた。

「今は馬が俺の恋人だな・・・2匹飼ってるんだ」

「馬?」

 話を総合すると、どうやらお父様が大金持ちでボンボンだそう
である。

「スペインに来るときは俺が面倒をみてやるアミーゴ」

「了解。来年間違いなく行くよ」

 そんな感じでメールを交換した。
 ハバナでスペインの知り合いができるとは・・・。

 

  2006年11月17日   岡崎 太郎