671-Tシャツ

二年前の冬だった。
ユニクロがプレミアムダウンと銘打って高品質で低価格なダウンジャケット
を販売したことがあった。


 

 無地でシンプルなデザインだったから気づいてない人も多かったかも知れ
ないが、ある日地下鉄に乗った時のことだ。なんと同じ車両に発見しただけ
でも6人も同じ商品を着ているという状況に出くわした。
(ちなみに、どうして気づいたかと言うと、僕も購入していたのだ)
ともかく、それだけ大量に世に出回っていたという話しである。

 マーケティング的には、個人はより個人のアイデンティティーを求め、
ニーズは多様化すると言われてきた。その文脈の中で、オーダーメイドや
デルに代表されるパターンアレンジを意識したメーカーも増えた。

 そしてITの普及と進化によって、企業は安価にデータを構築し分析する
体制が整い、ワントゥワンというコンセプトはいよいよ実現可能な時期を迎
えたように思われた。

 しかしユニクロの例に漏れず、ルイ・ヴィトンにしてもどうだ!
一部オーダーメイドは存在しているが、普及ラインにおいては、同じ製品を
大量に生産し販売しているし、相変わらず顧客も購入している。

 少し街をあるけば、同じ型のバックをもった女性に何度も出会う。

 洋服やバックやアクセサリーは、個人のアイデンティティーに直結する部
分である。しかもお洒落度の高いアイテムやブランドになればなるほどその
はずである。

 これは、どういうことなのだろうか?

 ファッション雑誌を見て、あのモデルが着ていた服が欲しい。
 ドラマの中であのタレントが持っていたあのバックが欲しい。
 そういうニーズがある。安心とか憧れとかだ。
 もちろんそういう気持ちは充分理解できる。

 また企業の利益を考えれば生産は大量で一括にやったほうが絶対に効率が
いい。

 問題は世界に一点とはいわないが、どの規模に何パーセントまでなら許せ
るかということだ。

 あるブランドTシャツは1シーズン3ヶ月に50~60パターンを発表す
るそうだが、ひとつの店舗で同じデザインの商品は100枚程度しか販売し
ないそうだ。

 これは鹿児島でのヒアリングなのだが・・・鹿児島市が60万人で
16歳から35歳までの男性が約10万人と仮定すると、1000人に一人
つまり0.1%が同じ商品をもっているというコトになる。

 これは多いのだろうか?

 しかしこのブランドを嗜好するユーザーは特性があるわけで、均等に分布
などしていない。街のある一定エリアによく出没することは充分考えれる。

 すると同じデザインのTシャツを着た奴にばったり会う確率は高くなる。
一回は許せても、一晩で2人3人と会ってしまうと、どう感じるだろう。

 相手が自分と似た
アイデンティティーであったとして許せるのだろうか?
 

  2007年07月19日   岡崎 太郎