710-人生に無駄

 38歳になった。

 先日、金沢大学で講義をしたのだが、学生のおよそ半分が20歳だと聞き
驚いた。彼らが生まれた頃、すでに僕は働いていたのだ。


 

 40年間働くとして、ようやく折り返し地点なのであるが、まだ20年と
考えるのか、たった20年と考えるのか・・・ともかく残りの時間は刻々と
減っていく。

 人生に無駄はない。全て必然だという言葉があるが、思い返すと今まで
一番無駄だと思っていたことが、最高に意味のあることに変化するなぁと
思う。

 たとえば、18歳で勤めた消費者金融大手の武富士で毎日毎日ポケットテ
ィッシュを配った。最初は好きでも嫌いでもなかった配布作業だが、ある朝
高校の後輩に目撃され「あの先輩ティッシュ配ってたよ」と笑われてから大
嫌いになり、それからは苦しい作業になった。武富士以外のアコムやレイク
プロミスといったライバル会社では、アルバイトが配っていた。僕は、時給
の高い社員がする仕事ではないと不満をもっていた。


 その後8年ほど経過したある日、僕はこの作業が素晴らしいことに気がつ
いた。これぞ仕事の原点だと感服したのだ。

 消費者金融の商品とは「一万円札」なのだが、大手の貸出金利は横並びで
あり、差別化はまったくない。あそこの一万円札は綺麗とか便利などはない
のだ。当時はブランドなどという言葉もなかったと思う。なにせ「サラ金」
なのだ。

 そこで効いてくるのは、従業員の質である。

 明るく元気に爽やかに「ティッシュを配る若者」のいる会社に行くのが人
の心理というものだ。これ原点。

 また、事務所として新規顧客を獲得するために努力できる行動は、唯一
「ティッシュ配り」だ。テレビCMや新聞広告の効果をただ指をくわえ待っ
ていても仕方がない。

 自分の努力で売上げを作るには?
 このことを真っ直ぐに考えることの重要性を教えている。

 売上げは自分で作るものなのだ。

 当時、街で500個のティッシュを配ると、一人の新規客を獲得できてい
た。元気に爽やかに配ることが大前提だが、努力は報われるのだという感覚
がそこにはあった。

 これが通販で言うCPO(コストパーオーダー)だと気がついたのは、
最近のことである。

 ともかく、無駄なのか?意味があるか?その最中にはわからないし、判断
すべきことでもないのだろう。すべては必然なのだから。

 

  2008年01月18日   岡崎 太郎