お金に糸目をつけなければ美味しい料理はたくさんある。もちろん美味し
い美味しくないの判断は個々人の経験や価値観または状態に影響される。
年365日の内、300日以上外食の生活を15年以上過ごしている僕の
基準は数年後であっても正確に思い出すことのできる「記憶に残る料理」で
ある。死ぬ前にもう一度食べたいと思う至高の料理や酒といってもいい。
博多のドン、メゾンド吉田のキャビア乗せ自家製スモークサーモン。
古き良き時代の高級感が堪能できるマカオの「Robuchon a Galera」
銀座のアンリ・シャルパンティエの絶品スイーツ。
中華は香港 銅鑼湾のレッド ペッパー (南北楼)の海老チリの鉄板焼。
世界一旨い小籠包を提供する鼎泰豐の日本の店舗にはない蟹味噌小籠包。
世界一旨い坦坦麺を提供する香港の詠蔡園。
バンコクのステイトタワー63階の最上階にあるレストラン「シロッコ」。
キューバにあるへミングウェイの通ったフロリディータのダイキリ。
NYのリトルイタリーにあるUmberto clam houseのベークドクラム。
どれも鮮明に記憶に残る感動を提供してくれた。
美味しいだけでは記憶に残らない。
ポイントは想像を超えるである。
想像を超える組合せ
想像を超える絶品素材
想像を超える味付け
想像を超える塩加減
想像を超える焼き加減
想像を超える盛り付け
言い換えるなら、想像を超えるアイデアや想像を超える努力に感動して
記憶に残るのだと僕は理解している。
過去もっとも記憶に残った料理にひとつに、漫画『専務・島耕作』の中に
も登場する博多・有栖川で食べた「ふくの刺身」がある。
驚いたのは、天然とらふぐの薄造りに洋ナシのピューレがあわせてあるの
だ。見た目も華やかなこの組合せは過去食べたふく刺し中最強である。
おかげで同日食べた他の料理の記憶がないほどだ。
そういえば、東京のイタリアンでゴルゴンゾーラに黄トマトのジャムの
組合せも同様、記憶している。青カビのチーズに蜂蜜や甘めのポートワイン
が合うことは広く知られているがトマトのジャムとは驚いた。
焼き肉でいえば、東京の「虎の穴」最上級の牛を種類別に一切れづつ
店主が焼き配ってくれる。最上の素材を最高の焼き加減で最善の組合せで
食べるのだから美味くないわけがない。博多の「みや古」は高級ホテルの
鉄板焼で提供されるレベルの黒毛和牛のヒレを惜しみなく焼肉で食べさせて
くれる。ロースやカルビとくらべて油の少ないヒレだがこの店のヒレ肉は
とにかく美味い。
寿司でいえば今は惜しまれつつ閉店してしまった「趣味撰」
素材は道場六三郎似の店主が数年かけて各地の小さな漁港をまわり発見した
源泉素材。とくに「あわび」や「うに」は他店では絶対に食べれないほど旨
かった。カウンターは繋ぎ目のない、ぶ厚い板檜(ヒノキ)で店をオープン
する数年前から購入していたそうでちょっと他ではお目にかかれない銘木だ
った。椅子も店主自らデザインした特注の漆塗りで最高の状態で寿司を食べ
させるという気迫に満ちていた。
料理の脇をかためる要素として、手際のよさ、メニューのセンス、接客態
度、食器、店舗の内装、清潔度、BGMなども大きく影響するのはもちろん
だが、それもこれもメインの料理が美味しくてこそだ。
また料理ではないが、記憶に残っている酒に、汐留の「すし善」で飲んだ
「洗心」がある。好みの江戸切子のお猪口を選び酒を注ぐ。口に含むと磨き
に磨かれた透明な液体が染み入るように体内に吸収される。
「洗心」は、銘酒「久保田」の蔵元 朝日酒造のフラッグシップであり、
減肥栽培の酒米「たかね錦」を28%まで磨き上げた純米大吟醸酒で、飲めば
最上級の酒だけが到達する域を理解することができる酒でDRCやルロワと
いった高級ワインと同等またはそれ以上の感動がある。
価格は高いがそれを上回る感動がそこにはあるのだ。
想像を超える商品・サービス。それこそがポイントだ。