食料の価格が急激に騰っている。
小麦は去年3月に比べたった一年で2.3倍(1トンあたり200$>480$へ)
米は1.7倍・トウモロコシは1.4倍になった。
自給率が4割を切っている日本はこの影響をモロに受ける国のトップで
あることを忘れてはならない。
石油価格の高騰で海外からの輸送費が騰がっているだけではないのだ。
食料価格高騰の原因は干ばつによる不作や食料のバイオ燃料への転用、
そして中国やインドなどの人口増加と経済の爆発であると言われている。
とくにトウモロコシのバイオエタノールへの転用は、家畜飼料の値段高騰
という事態を引き起こしている。ちなみに人間が直接穀物を摂取するのに比
べ、家畜に食わせて肉として食料をえる方が穀物が必要になるのは当然であ
り、中国などの経済力向上に伴う、肉の消費量が増えていることも要因にな
っている。まさに風が吹けば桶屋が儲かる如く、さまざまな要因が連鎖して
高騰を引き起こしているのだ。
そして食料高騰は社会不安を呼ぶ。
エジプトではパン屋を市民が襲い死傷者が出たニュースが流れた。
フィリピンでは米不足から民衆の蜂起が起き、ラテンのハイチでも急激な米
不足からデモが起きている。そのほかエンゲル係数が50%以上の国々の
33カ国にのぼるカメルーンやセネガル、ギニアなどのアフリカ諸国や
アルゼンチンにインドネシアなどでもデモや暴動が後を絶たない。
世界銀行によればこの3年間で新たに一億人が貧困に陥り、待ったなしの
救援活動が必要だという。
それなのに、いまや食料は金や石油と同じようにマネーゲームの主役に
躍り出た。ある投資ファンドはここ数年で食料価格はさらに3倍になると
自信満々に発表した。そんな予想も飛び出すこの価格高騰の流れに便乗しよ
うと年金マネーまで先物市場に流れ込みだした。
しかもここに来て、アルゼンチンは小麦の輸出停止、ウクライナは輸出を
規制、エジプト、ベトナム、カンボジアは米の輸出を停止するなど、自国の
食料危機を回避しようと各生産国が輸出量に規制をかける動きが活発化して
きている。
国民に食わせる飯がなければ、よそに回すモノなどないのは当然である。
つまり先進国は食料をマネーゲームのおもちゃに、後進国は守りに入る。
日本政府はあいかわらず対応どころか反応さえ出来てないように見える。
「オカザキマガジン245号・501号」では農業を考えたり、水問題としてバー
チャルウォーターについて紹介したが、水・食料の問題は、環境や石油と同
じように、まさに待ったなしの状態に近づいている。