■前回の復習
前回は送り先のリストについて自社顧客か外部のリストか大別す
ると二つに分かれるといいましたね。
そして、お客様の不安を取り除くのには、挨拶文が有効だと紹介
しました。そしてその心は挨拶にはじまる礼儀とその会社の姿勢
なんだということですね。
ところで前回に続き、ある健康食品メーカーの挨拶文が手に入り
ましたのでまず紹介します。
1ごあいさつ
2すっかり夜は寒くなり秋を感じる頃となって参りました。
3いかがお過ごしでしょうか。
4私達は毎日新しい感激と反省の中に「健康・自然・本物」を目指
5して新商品の開発にも全力で取り組んで参りました。
6「当社製品」も発売以来、予想を上回るご注文を頂きまして、現
7在おかげさまで20万人ものお客様にご愛用されております。
8私は○○が体には良いことはわかっていますが、日々の激務の中
9仕事も忙しく毎日の料理に気を使い、食事として家族に食べさせ
10ることは、なかなか難しいことです。
11当社の自然一番○○は専業農家で昔からこだわって作られてい
12る○○を約50倍に濃縮してカプセルに詰めた物ですので、いつ
13でも手軽にどこでも摂取することが出来、家族の健康をあずか
14る主婦であり、私自身とても助かっています。
15今回この「○○」をあなた様にもう一度お使いいただきたいと
16思いあらためてお試しサンプルを再度お届けする企画です。
17ぜひこの機会に「自然一番○○○○」の素晴しさをご理解頂け
18れば幸いでございます。
19社員一同
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読まれてみて、あなたはどう感じるだろうか?
そっけない感じがするのではないだろうか?
礼儀はあるけれど、心が篭っていない感じはしないだろうか?
前回お送りした、挨拶文に比べてどこが違うのだろうか?
では気がついたことを紐解いてみたいと思う。
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まずメルマガ上では、わからないのだが前回の挨拶文は手書きの
印刷だけれど、今回のものは、ワープロの明朝体である。
メルマガの都合上、手書き文字の力強さをお伝えできないのが
残念ではあるが機会があれば、セミナー会場では紹介したいとこ
ろである。
次に文字量について。
前回の挨拶文が3244文字に対して今回のは437文字と実に7.4倍も
少ない文字量なのである。
437文字というと、前回の挨拶文のほんの冒頭の私はこういうも
のですと紹介した部分までである。
つまり、短い・短すぎるのである。
ただし、文字量が多ければ良いと言うものでは無い。
しかし437文字では、単に通過儀礼的な挨拶にすぎず、せっかく
紙に印刷をするのであれば、もう少し捻ってほしいところだ。
ではどういう点を補強すればよかったのだろうか?
まず4行目から5行目の部分だ。
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私達は毎日新しい感激と反省の中に「健康・自然・本物」を目指
して新商品開発ににも全力で取り組んで参りました。
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重箱の隅をつつくようだが、「日々新しい感激と反省」とは、
どういうことなのだろうか?また「新商品開発に全力で取り組
む」とはどんな風にのだろう?
この部分が全く描かれていない。
単語で「感激・反省」と書かれても何も伝わらないのである。
また「全力で」というのも同じである。
「僕は今猛烈に感動している。」と言われても、
一体何に、どういうことに?感動していて心がどう感じているの
かを説明・描写しないことには、伝わらないのである。
そしてこの部分を細かく、目を閉じれば、今まさに情景が想像で
きるほど書き尽くすべきなのだ。
挨拶文に対面したお客様の心を震わせる心意気で書かなければ駄
目だ。そのために、どうしたら表現力が養えるのかという事に、
意識が行きがちだが、ただ文章力を向上させるだけなら、そんな
難しいものでは無い。
そのためのトレーニングはいくらでもある。
だがしかし、お客様にこれだけは絶対伝え切たいという「思い」
があって、はじめて伝わる話であり、なければただの絵空事で
パワーのない魂の抜けた文章になり下がるのである。
言葉はただの記号であるという事を肝に銘じるべしなのだ。
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次に8行目から14行目の部分だ。
8私は○○が体には良いことはわかっていますが、日々の激務の中
9仕事も忙しく毎日の料理に気を使い、食事として家族に食べさせ
10ることは、なかなか難しいことです。
11当社の自然一番○○は専業農家で昔からこだわって作られてい
12る○○を約50倍に濃縮してカプセルに詰めた物ですので、いつ
13でも手軽にどこでも摂取することが出来、家族の健康をあずか
14る主婦であり、私自身とても助かっています。
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たったそれだけなのか?
これは挨拶文を書いている人間の紹介の部分であるわけだが、
お客様へのメッセージは、なんだろう?
この部分の役割を考えてみてほしい?
これは、お客様に、私もこういう環境で生活している人間で、
日々激務で大変なんでっすよ主婦なんですよってね。
投げかけてる訳だが
これはつまり、「共感」を得ようという働きかけなのだ。
しかし、なんともアリガチな小話であり、驚きも何も無い。
まして描写がシンプルなくせに11行から12行の、製品の紹介をし
てしまうものだから、いよいよお客様との距離を感じる。
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そして16行目だ
16思いあらためてお試しサンプルを再度お届けする企画です。
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「企画」という言葉には、「企てる」「計画を立てる」「もくろ
む」という意味で、ビジネス的にいえば、入手した情報を加工し
、再構築して新しい価値を捻出する行為が「企画」なのだが。
「企画」とは"画を企てる"と書く。
くわだてるんです。
企てるとは元来あんまりいい意味では使いませんよね。
「社会の転覆を企てる」「世界征服を企てる」「攻撃を企てる」
とかね。
だからあんまり一般のお客様向けに使う単語ではないのだ。
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とざっとこんな感じなのだが、少しフォローをさせてもらうと、
この会社、挨拶文にはかなり真剣に取り組んでいるはずで、実は
今回も期待をしていたのだ。
なぜなら今までの挨拶文しかり商品案内ツールどれをとっても素
晴しく、とくにひとつ前の挨拶文は、とても細かな描写と慈しみ
に溢れた手書き文字の挨拶文を製作しているからだ。
それが、なぜ今回はワープロなのだろう?
手書き文字の暖かさを知ってるはずの会社ではなかったのか?
お客様にどうすれば伝わるか、語感のもつ繊細な響きを理解して
いる数少ない通販会社ではなかったのか?
そしてあくまで私の予想だが、前回紹介した長文の挨拶文の原型
は、今回ご紹介した会社の挨拶文が元のはずなのだが?
ぜひ次回の挨拶文には期待したい。