148-堀 紘一さんとセッション

■堀 紘一さんとセッション。
 
 「学びの姿勢が君はあるか?」


■堀 紘一さんの経歴

 東京大学法学部卒業、ハーバード大学MBA取得。
 読売新聞社、三菱商事を経てボストンコンサルティング勤務。
 1989年同社社長就任。19年にわたる会社戦略・事業戦略の立案
 ならびに企業風土の改革や活性化に関わるコンサルティングの
 豊富な経験を活かし、2000年6月ドリームインキュベータを設
 立。現在ベンチャー企業の育成・大企業のE-ビジネスの支援
 中。 サンデープロジェクト等のTV番組なんかでも活躍され
 ています。

 堀 紘一さんの著書はなんと40冊以上。
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■会いたかった人物
 
 1年ほど前にあるセミナーに参加してお話を聞いて以来・・・
ほんとに講演内容も話し方も、さすがプロだなーと思って、
直接会ってお話したい方の一人だったんです。

それが先週の土曜日19日、堀さんを福岡のベンチャー企業8社で
囲むという「福岡CEOフォーラム」にたまたま参加できて、直
お会いできる事になってびっくり。

このフォーラムなんだけど、午前中の11時から17時まで、時間が
無いので昼食も弁当を食べながらで、トイレ休憩もたったの10分
という過密過酷鬼の進行で、人材戦略と経営戦略についてテーブ
ルをロの字に囲んでディスカッションをするというもの。


まずは堀さんから
「今日参加のメンバーがこの部屋を出るときは必ず来た時より賢
くなって帰ろうね、経営者として人間としてもっとも大事なもの
は一番目が謙虚さで二番目が素直さだよ」

と、貴重な時間をかけてるんだから、積極的に取組む姿勢でがん
ばろうと始まりました。

続けて、

「謙虚さがなくなれば企業の繁栄なんて続かない。」

「なぜなら謙虚でなければ学習できない。
すると高まりようがないんだ。」

「学歴がいくら高くても全く関係ない、18・19歳の時に一生懸命
受験勉強しただけだからね。確かに、そんなツマンナイ事も馬鹿
らしく思わず集中できると言う証明にはなるけどさ。」

「スタートの問題であって社会に出た後学習したかどうかが大事
なんですよ」

「つまりは心がけの問題で、僕なんか、いまでも毎日、今日一日
「何個学んだか」数えてるよ」

「一日3個学べば、一ヶ月で90個。一年で1080個。
 十年で10,800個学べる。大切なのは積み重ね。」

「どんな人からでも、どんな些細な事からでも、どんな本からで
も学ぶ姿勢があれば、最悪「反面教師的」にだって学べるよ。」

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そうですよね。前回のセミナーの時は本を読めと言ってましたが
同じ理屈ですよね。

1ヶ月で10冊読めば。1年で120冊。10年で1200冊。

読んだ人間と読んで無い人間。

必ず差が出る。

そりゃそうですよね。なんてわかりやすい話なんでしょうか?

それに謙虚と素直。

確かに、心がけを忘れれば、人はスグに、他人のアラを捜し、
非難し反対し拒絶し誹謗しがちです。

しかしそんな事をしても、何も生み出さない。
それは結局なんの意味も無いですもんね。

疑うのは勝手だけど、そんなことしても心が寂しいですよね。

確かにシンプルだけど「謙虚と素直」が一番だ。
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そして、堀さんは続けます。

経営者に必要なのは
1常識
2定理
3創意
の3つが大切です。

常識は、遅刻・言葉使い・礼儀作法・挨拶・約束、社会人として
当たり前のことと、いわゆる業界の常識を知らないといけない。
まぁ得てして、業界の常識は社会の非常識な事が多いんだけど、

その業界で勝つには、全くその業界の常識を知らずには無理。
常識を知って、どうしたらいいかを考えましょう。


「次に定理。」

定理と言うのは、こうすれば、こうなると言う事で経営学だね。

経営を勉強しないでやると、根性物語で100億までは成長できても
100億の壁は超えれないよ。

ちゃんと勉強しないとね。

そして創意工夫の創意。

定理は大事なんだけど、経営学だけをやっても100億の企業が出
来る訳ではなくて、創意しなきゃいかん。

そして
ひらめきや思いつきを経営学に基づきシッカリしたプランに
しなきゃいかんわけだね。

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なるほど。100億企業と言われると、僕はまだ体験したことが無
いから解んないけれど・・・・きっとそうなんでしょうね。

堀さんに言われるとそんな気がします。

どうしても運と度胸の一発勝負がすきなもんで・・・。

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進行は、まずスタッフの山内さん27歳から、人事戦略の問題提起
の焦点をプロジェクターを使って説明後、堀さんがフォローし、
その後、ランダムに名前を呼ばれ、発言します。

例えば人事戦略の話では、
MBA的にケーススタディーを説明、意見交換を繰り返します。
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■ケーススタディー■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

あるベンチャー企業が急成長している中で、社長は右腕として
大手部長職経験者のAさん43歳を、当社の営業部長に迎えた。

彼の下には3人のマネージャーを配置したのだが・・・・

3人のプロフィール

■35歳で創業メンバーのBマネージャー。

創業時から会社を見てきているので、各仕事を理解こなしてはい
るが社員をまとめるためグイグイ引っ張るダイプでは無い。確か
に創業時の人数の少ない時期は、重要な役割を担ってはいたのだ
がこれからの成長を考えると、素質に疑問が残る。


■ベンチャー出身のCマネージャー。

A部長より少し前に入社した36歳でポテンシャルは高そうだが、
まだ結果は出ていない。しかし前職でマネジメントの経験があり
これからのリーダーとして社長の期待は大。


■最後は業界大手出身のDマネージャー。

A部長の後入社した33歳。入社後すぐに結果を出したことから
社員にも受けがよく、ポテンシャルも高いが前職では、マネジメ
ントの経験はナシ。

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そもそも社長は採用にあたり、
A部長には、自社が急成長するなか、営業に弾みをつけようと
採用を決めたのだが、採用後、マネジメントは管理色が強く明る
くグイグイ引っ張ると言うよりはネガティブな方法に見えるし、
その管理手法は社風にも馴染まないようにも見える。

そして決定的だが、実は営業力が弱い事が判明。

さらには、A部長、創業メンバーのBマネージャーとは対立。
ベンチャー出身のCマネージャーとはギクシャクしている。

このままだと、ますます若手の士気にも影響が出るのは必至。
幹部なので、単に採用ミスとして片づける訳にもいかない。

とはいえ、早急な解決の意思決定が必要なのだが?

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このような採用・昇進・人事に関する問題は悩ましく、問題が
複雑にからんでいるのだけれど・・・・

こういった具体的なケースの説明を聞いて、ディスカッションが
スタート。

ベンチャーとは言え、100名程度の社員・スタッフを介している
会社の代表同士の発言はほんと、採用面接時点でのポイントとし
て思考パターンの見方や解雇のポイントなどの意見がバンバン出
て勉強になりました。


堀さんの解説の中には、
「日本のベンチャー企業は大企業より複雑な制度を採用している
小さいんだから、大きい会社がやらないようなことをどんどんや
んなきゃいけない」や

解雇については、
「当初、社員全員が嫌われてるA部長の解雇を望んだとしても愛
情の無くトップダウンでいきなり解雇にしたりすると、

今まで解雇を望んでいた社員に、恐怖が生まれ反発が帰ってくる
場合があるんだ」

なんて「なるほど、そうだ」と考えさせられます。

そして堀さんは、
会社が成長すれば社長も成長しなければいけない。

その成長の力を持っているか?

だから素直が一番でこれが大切なんだけど、実際に
「成長の角度」のみを評価の基準において人事はあたるとはどう
するのか?

何を成長とみるのかの定義についてだったり?

その評価に対しての報酬をどう設計するのか?

マネジメント側とスタッフ側のやりとりをどうするのか?

について貴重な意見を伺えました。
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■第二部は経営戦略

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まず哲学・考え方があって、それを実現するための方法論がある
わけで、これが逆になると駄目だよねという事。

堀さんはこう続けます。

「まずお客様を死ぬほど大切にして顧客満足を充足すれば、
それが利益と成長の源泉として循環するはず。」

「収益から考えるのではなく顧客満足を考え、戦略を差別化すれ
ば高収益になるんだ。」

詰まるところ、戦略とは競合優位性の事で、極論社長の仕事は、
これを考えることに尽きる。

競合優位性がなければ、経営は長期は成り立たない。

他社と同じであれば生き残れはしない。

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この競合優位性を念頭に戦略の話は、特化(差別化)と平均的原
価政策の罠(いろいろな事を手広くやると儲からない)について
進みます。


そして自社の事業が手詰まり事業か規模の戦いの事業なのか
特化戦略で高収益を狙うニッチ事業か、戦略が分散されている事
業なのかを見極めましょうと続き・・・・

いくつかのケーススタディーを使い説明を受け意見交換。

印象に残ったのは、堀さんのマネの三原則。

■マネの三原則。
 
 1-マネできない
 2-マネしにくい
 3-マネしたら損


ビジネスは学問とは違う。
だれが最初にはじめたのか?
元祖は誰か?なんて威張っても仕方が無いんだ。

ビジネス的には二匹目のドジョウでも充分成立する。

つまり特化戦略を組む場合、このマネの三原則を念頭に
戦略を組むこと。


ちなみに3番目の真似したら損をするというのは、

例えばあるベンチャーの化粧品メーカーが全国に訪問販売の代理
店をつくり売上げを拡大しているからといって、全国のデパート
に販売網をもつ大手が、同種の訪問販売の事業を立ち上げのは、
難しいのです。

つまり既存のしがらみですね。

だからマネしたら損をするのでやらないとなる訳です。

経営戦略のディスカッションは、実際に参加者が抱えている具体
的な内容のやり取りへと過熱。「アイデアは簡単に盗まれるよ」
だから気をつけなさいとアドバイス頂きました。
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終わってから1階のカフェで小一時間懇親会をやって、

その後、飛行機の時間ギリギリまで(株)ジモスのコールセンタ
ーを見学頂きました。

懇親会では
堀さんの隣に座らせてもらい・・いろいろ励ましを頂き大変勉強
になりました。

やっぱり学ぶ姿勢。謙虚・素直

この人間として「かわいい」か「かわいくない」かの差だと思う
のですが反省してがんばりたいですね。

堀さんありがとうございました。

  2002年10月21日   岡崎 太郎