299-PRECIS プリシス

年末にオープンしたばかりの、あるバーでお酒を頂いた。

 まだ1階から3階は工事中という真新しいビルの4階と5階を占拠
した「ヴィラコスタ サンジョルディー」の5階に設けられたバー
なのだが、とても品のよい内装と照明と心地いい空間に感心しな
がら、バーテンに案内されるままカウンターに腰をおろした。 

 

 お客は僕一人。

メニューに目を落とすと数十種のカクテルにバーボンやブラン
デーに混じってエクスペンシブなフランス五大シャトーと88のオ
ーパスワンが片手以上の値段で並んでいる。

 次のページを開くとグラスシャンパンにグラッパにシェリー酒
と並ぶ中、今時なんでしょう「焼酎」のラインナップ。

 写真はなく文字だけの品のいいメニューなのだが、丁寧で気の
利いたコメントが、それぞれ一行添えてあるので、ついコメント
を目で追ってしまう。

 そこで見つけたのが、沖縄与那国の泡盛「花酒」の原酒「舞富
名・まいふな60度」、福岡と沖縄が九州だからといっても、そう
そう福岡に60度の泡盛の原酒をおいてるお店はありません。

「ねぇ舐める程度でいいから試しにすこしもらえるかな?」

 気の利いたバーテン君が、ほんの少し60度をサービスしてくれ
た。「どれどれ」さっそく鼻の下でグラスを嗅ぐと、常温のまま
だからか、思ったほど強烈なアルコール臭というより泡盛独特の
土着で豊かな香りが広がる。

「舌が焼けるんじゃないの?」

「大丈夫ですよ」

「おいおい大丈夫ってガブガブは飲めないだろ?」

「あはは、誰もガブガブは飲まれません」

僕はうなずくと少し緊張しながら小さなグラスを持ち上げグィ
ッひと息で口の中にひっかけた。

「うへぇええ、熱い!揮発してるよ・水・水」

 氷水でたっぷり冷やすと、その刺激的な試みが無事終わった事
と度数の強いお酒のせいで、少しくだけた気分になってきた。

「うーん。バーテン君、君は25歳だろ?」

「えっ? はい、ちょうど25歳です。
   ・・・でもどうしてわかるのですか?」

「直感だよ。気負いがないと、よく当たるんだ」

「へぇえ凄いですね」

「僕の最高は11人連続。クラブのお姉ちゃんの年齢を片っ端から
当てて最後は帰宅途中のコンビ二の店員だったかな」

「あはは、それは記録ですね」

「ああ」

「何かお作りしましょうか?」

「じゃあグラッパをストレートで」

「かしこまりました」小気味のいい返事の後、すぐ後ろにある
細長いグラッパのボトルを引き寄せた。

「唐突だけどさぁ、君の夢は?・・・夢はなんだね?」

「夢ですか?」と言うと少しの沈黙の後、注いだグラッパを僕の
前に押し出しながら「実は僕、中国人なんです」と答えた。

「えっそうなの!全然わからなったよ、日本語上手だね?」

「15歳から日本にいますから・・父が大学院に留学する際に来日
して、それ以来・・・現在大学三年です」

 中国の人は日本語をいくら勉強してもイントネーションに不自
然さが残るのだけれど彼はその中国らしさを感じさせない。

「それで夢は?」

「中国一の大金持ちですかね・・・」すました表情でさらっと
言ってのけた。日本人の25歳なら、少し照れる返答だ。


「それはいい、ではひとつだけアドバイスをしてもいいかい?」

 話の成り行き上ではあるが、あまり説教くさくならないように
気をつけながら僕は続けた・・・もし彼が興味がなければいつで
もこの話題は中止しようと思いながら。

彼の答えは

「ぜひ、教えてください」

「了解。シンプルな事だけど、お金持ちの前に「しあわせな」を
つけると言いよ。これが付くと付かないでは全然違うからね」

 きょとんとした彼を見て僕は

「どう、いいアドバイスだろ?」

「はい・ありがとうございます」
 と少しお辞儀をした彼に満足した。

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 この話は実話なのですが「しあわせなお金持ち」というフレー
ズは僕のオリジナルではありません。

 なにを隠そう「ユダヤ人大富豪の教えの本田健さん」ですね。
既刊の「幸せな小金持ち」から拝借したわけです。

 先週、講談社を会場に開催された記念講演で会って来たのです
が、またまた感銘をうけてしまいました。

 今回の新作の内容は、日本のお金持ち1万人に慣行した意識調
査を基に書き下ろされたもので、なんとも実践的かつ惚れ惚れす
る内容の数々。

 ぜひ手にとって読んでください。

■普通の人がこうして億万長者になった
 一代で冨を築いた人々の人生の知恵
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/406212274X/qid=1076392466/sr=1-5/ref=sr_1_10_5/249-6342939-1437944

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おーっと、話を戻そう。

 正面の棚に気になるスタイリッシュで上品なボトル。
「PRECIS」と書いてある。

「プレシス?」

「いえプリシスです」

「何?ブランデーなの」

「いえ、ウォッカです」


 さらにウォッカといえばロシアと思いきや、なんとスウェーデ
ン。それも最高級のウォッカというから驚いた。 

キンキンに冷やしたウオッカをショットグラスでクィッと頂く。
 
「うまい!さっきの原酒もいいけれど、こちらも最高にうまい」


 そこで調べてみた。

 このウォッカなかなか奥が深い。

http://www.precissweden.se/

 スウェーデン語でプリシスとは「精確」「精巧」を意味するら
しくし、1971年にアルコール飲料の蒸留が法律でオープンになっ
た際、建設されたスウェーデン最古のブティック蒸留酒製造所に
よるもので

 スウェーデン人の技術者アンダース・ランドクランツ士が開発
した特殊製法「プリシジョン・ディスティリング」
(たった1回の蒸留で不純物を完全に取り除く製法)によって作
られています。(ネーミングはこの独特な製造技術に由来)

 特殊製法プリシジョン・ディスティリング技術を支える大切な
要素は、すべての生産過程で使用される水の純度に秘密があるそ
うで、スウェーデンの澄んだ水が決め手なのですね。

「美味しいでしょ」

「うん。いいね。」

「ありがとうございます」


こんな素敵なお店はこちら。 

■ヴィラコスタ サンジョルディ
福岡県福岡市中央区大名1-1-15ダイヤモンドヒルズ大名5F 
 092-738-1977 

http://www.isize.com/marriagelife/idx_s/BOX_1676925027

  2004年02月12日   岡崎 太郎