「永」という漢字は、それぞれの線の配置が難しくバランス感覚 を要求される文字だが、実は楷書を書く場合の基本的筆使いが、 八種類含まれている。 |
この事から「永字八法」と呼ぶのだが、この一字だけで書の腕
前を見抜けると言われている。
つまり「永」という文字は、基本点画のお手本と言える。
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三冊目の取材で、書体を販売している「モトヤ」の書体開発30
年というベテランの方にお話を伺った。
とにかく聞けば聞くほど奥が深い。
僕は、通販業を通して広告のジレンマをどうにか解消できれば
と、新聞の文字にたどり着いた。ちなみにジレンマとは、たくさ
んの商品説明のためには大量の文字が必要だけど、文字が多くな
ると消費者に読んでもらえなくなる率が高くなること。
「活字離れさ」と安易な考えに同意するわけにはいかない。
なにせ読んでもらわなければ売れないのだから仕方ない。そも
そも日本国内の新聞発行部数は世界一である。ビジネスマンは日
経新聞と朝日新聞というように、二冊以上購読しているケースも
多いではないか!
先述のモトヤさんは、日経新聞に文字を提供している会社なの
で、ここぞとばかりに突っ込んだ質問をさせていただいた。
多くの気付きとアイデアを頂いたのだが、文字デザインにおい
て彼らがこだわっているのは「可読性」だそうだ。
可読性とは、大きさの統一・寄り引きの調整・太さの統一性・
文字の美しさ・漢字と仮名の調和という5つのバランス。
■大きさの統一
文字を無造作にレターフェイスいっぱいまでデザインすると、
大きさの統一が取れないばかりか文字間隔がバラツキ、可読性を
損なう。
レターフェイスとは、原稿用紙のマス目と考えてもらえばいい
です。(文字が描ける最大範囲)
■寄り引きの調整
寄り引きとは、ボディサイズの中に配置される文字の位置の事
文章を組んだ際、それぞれの文字が中心に見えるようデザイン
するために必要な事。これは文字が適切な大きさにデザインされ
ていてはじめて実現できることで、どの文字もレターフェイスい
っぱいにデザインされていては寄り引きの調整は出来ません。
これを理解するには、文字には様々な形がある事を理解してく
ださい。「国」は□です。「今」は◇ですね。
同様に、「上」は三角形(△)、「下」は逆三角(▽)です。
上下方向だけではなく左右方向それぞれの位置を調整しないと
文章として組んだ際には、文字をまっすぐ配置しても波をうった
ように見えます。
■太さの統一性
同一ウエイトの文字は、当然同じ太さに見えなければ可読性を
損ないます。そこで視覚的に同じ太さに見えるように画数の少な
い簡単な文字と画数の多い複雑な文字とには太さに差をつけ調整
します。
例えば明朝体の「鷹」や「轟」といった黒の多い文字は、一定
線巾である横線の多さにその原因がありますから、縦棒をいくら
細くしてもあまり効果はありません。
これを解決するには、文字全体のバランスをとる以外なく横線
の配置・言い換えれば空間の割り方を調節しなければ適正な太さ
には見えないのです。
また空間の割り方や処理という問題は横線以外にも、漢字を構
成する部品同士の間隔にも当てはまります。
例えば「回」という字は、「国構え」とその中の「口」の2つ
の部品が、それぞれを考えた配分の大きさでなければ窮屈に見え
てしまいます。
つまり、それぞれの空間を考え、間隔を適切に配分しなければ
読みやすくスッキリした文字にはならないのです。
■文字の美しさ
漢字にはそれぞれ固有の形、バランスがあり、例え外形がよく
似た文字(例:用と月,日と目)でも同じ幅や大きさに文字をデ
ザインするとアンバランスな結果、不恰好で不揃いな文字になっ
てしまいます。
■漢字と仮名の調和
仮名は簡単な形のものがほとんどのため、漢字と同じ大きさに
デザインすると非常に大きく見えてしまいます。
しかも文章を読む際、読み手は、仮名を実際には流し読んでい
ます。つまりじっくりは読んでいないのです。こういった意味か
ら仮名は漢字に対し少し小さめにデザインするのです。
つまり、一字一字が、どんなに格好よく形がとれていても文章
として組んだ場合の相互のバランスや統一感などが大切です。
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このように5つの要素から構成される「可読性」の良さは、読
んだ時の心地よさをもたらすと同時に、目にも優しいとベテラン
のお話でした。
ここ数年で新聞一段の文字数が一行15文字から、どんどん少
なくなって最近では11文字が標準になりそうです。
しかし、あれだけ大量の文字数な訳ですから「読みやすさ」に
は秘密があると思っていたのですが、文字にあったとは!
さすが長年の経験が生かされているんですね。
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