10月28日 朝5時から14時までの出来事。
目が覚めた、5時だ。
時差ぼけがうまい具合に作用している。
歯を磨いてカメラのバッテリーを確認するとさっそく部屋を出
た。そう目的地は遠い。なんといっても最東端である。
エレベーターで「君は日本人か?」と流暢な日本語で大柄の
ヨーロピアンな大男に声を掛けられる。
朝の5時にエレベータの中で日本語。なにかの縁なのか?
数年前に佐世保のハウステンボスで働いていたらしい男は寒い
NYを後にしてハワイに飛ぶそうだ。羨ましいぞ!
@ @ @ @ @ @ @ @ @ @
タクシーでLIRRが発着するペンステーションに行く。
まだ辺りは真っ暗だ。
ちなみにペンとはペンシルバニアの略で正式にはペンシルバニ
ア・ステーションなのだが、ほぼ9割は略して使われているよう
で紛らわしい。LIRRはロングアイランドレールロードの略。
地下のチケット売り場で「モントーク」行の往復チケットを窓
口で購入する。
英語がしゃべれなくても、なんとかなるもんだ。
しかし問題はここからである。何番ホームかわからないのだ。
ハハハ。
軽くパニックをおこしそうになる。
ハハハ。
でも大丈夫。
こんな事もあろうかと昨晩ネットからキャッチした情報が役に
たった。
それは信じられないことだが、出発の約15分前まで、どのホー
ムか決まってないというか頻繁に変更があるからなのか15分前に
ようやく掲示板に表示されるのだ。それまで乗客は待たされる。
空港での搭乗ゲートの電光表示のようなもんだが・・・
いくらなんでもアバウトすぎないか?
そんな心構えで列車を運営していいのか?
@ @ @ @ @ @ @ @ @ @
モントーク行の時刻表をゲットしてマクドナルドで変なバーガ
ーを食べる。ホットケーキの生地に卵とソーセージを挟んだもの
少し蜂蜜がかかっている。
もう2度と注文することは無いだろう。
15分前。ほんとに掲示板に番号が表示された。人の塊が一気に
指定されたホームへ移動がはじまる。
僕は首尾よく座席にありついた。
しかし簡単すぎるぞ。こんなにトントン拍子でいいのか?
なんとも上手く行き過ぎると僕の警戒センサーは少しナーバス
になる。
6時38分出発。実はこの時点において僕は、まだ終点の最東モ
ントークまで行くのか途中のセイヴィル位にしておくかを悩んで
いた。
セイヴィルまで1時間半。モントークまで2時間半。乗り換えを
考えるとモントークは遠い。場合によっては片道4時間だ。
なにせ16時にはアレンとの約束があるのでホテルに戻らないと
いけない。最悪連絡してキャンセルすればいいけれど・・・
19時にはクリスとの約束もある。これもぶっ飛ばしてモントー
クで一泊するか?
こんな風な事を考えながら僕はゲットした時刻表をじっと疑視
する。英語で注釈がいっぱい書いてある。正直よくわからない。
「えーとこっちは日祭日版で裏が平日か・・・ふむふむ、えーと
この期間は運行停止か・・・なるほどオフシーズンなのだな、
行きはこの時間だからモントークへは一旦乗り換えか・・・えー
と帰りは・・・と?」
「あっ・・・電車ないじゃん」
僕の田舎を走る単線のJR筑豊本線よりも本数が無い。この時
期モントーク・バビロン間は24時間にたった6本の運行で11:17の
後は14:51その後は夜の22:38そんな感じである。
しかもよく見ると注釈がある。時間の横にBとあるのはバスの
略でこの区間は汽車ではなくてバスを利用しろとあるのだ。
Transfer to express bus at Babylon.Bus does not make local
stops.Use Local Bus for intra-branch,local service.
なんてことだ。余計に時間がかかる。仕方が無い16時にホテル
に戻るなんて到底無理だ。
仕方がない。
さて、あきらめてしまえば後はアレンに連絡を取るだけなのだ
が・・・「しまった!」
アレンの携帯番号を知らない。メールのみだ。パソコンはホテ
ルに置いてきた。
いかんぞ。昨日はじめて会って何も連絡をせずにぶっちぎるな
ど人間のすることでは無い。
日本は夜の21時か・・・。僕は福岡の事務所に電話をかけてア
レンのメールアドレスを探すように指示をした。
まずグーグルで「英語・プライベート・マンハッタン・NY」
で検索して引っ掛ったリストの中に、http://www.c????.org
からはじまるページを探して欲しいんだ。
craigかCategolyか頭がCからはじまってorgで終わることしか
覚えていないんだけど。
そしてこのページを見つけたらトップに戻って検索ボックスに
「コロンビア大学の学生で1時間20$で英語を教える」で検索して
みてくれる?
次に、そのHPが生成している連絡用のメルアドに「太郎が帰
って来れない!今日はキャンセルだ」とメールしてくれ」
「わかりました。やって見ます。しかしインポッシブルなオーダ
ーですね」
面倒なことをお願いして申し訳ない!
君だけが頼りだハタジ隊員。
@ @ @ @ @ @ @ @ @ @
列車は快調にまずセイヴィルのひとつ先の駅「PATCHOGUE」を
目指している。
しかし携帯は鳴らない。苦戦しているのだろうか。
06;56「JAMAICA」駅を出発。
車内の電光表示にはNEXT STOP「Lynbrook」とある。
「Lynbrook?」
時刻表の停車駅には「Lynbrook」とはない。
もしかして?「JAMAICA駅」は乗り換えポイントである。
軽くパニック。
車掌を探して確認する。どうやら問題はないらしい。
時刻表にはスペースの関係上なのか「JAMAICA」という駅から
「BABYLON」まで間12駅が割愛されている。何度探しても割愛し
てますとは記述は無い。車内に路線図でもあればいいのだがそれ
も無い。
不親切である。落ち着きを取り戻し窓の外を見ると強烈な朝焼
で空が濃いオレンジに染まっている。
07;51 Penn駅から20個目の駅「BABYLON」で向かいの連絡車両に
乗り換えるアルミ製の2階建車両である。
@ @ @ @ @ @ @ @ @ @
まだ電話は鳴らない発見できないのだろうか?
途中経過を聞く。
「HPは見つけたのですが・・・そこから先が中々」
「そうか・・・サイトは見つかったんだね」
「ところで電波悪くなってきてません?」
「!」
思えば遠くに来たもんだ。超田舎である。「ヤバイ」
頼みの綱のボーダフォンが圏外になると困る。
@ @ @ @ @ @ @ @ @ @
08:25「PATCHOGUE駅」到着
LIRRは車内で車掌が確認するため改札は無い。
乗り換えまで1時間待である。待合室はあるが売店は無い。自
販機もない。静かな街だ。タクシーもいない。
かろうじて携帯のアンテナは2本立っている。この待ち時間の
間に連絡が取りたい。
「もしもし聞こえる?どう?見つかった?」
「もう少し何ですが・・・」
「うーん難しいね。アレンで検索しても駄目かい?」
「駄目ですね」
「1時間20$は? 20$ PER 1H」
「それは今からです・・・ちょっと待ってください・・・コロン
ビア大学の学生ですよね。あっ有りました!」
「おおおおビンゴか!じゃあ後はメールを送っといてくれ!それ
から俺の携帯番号と!後はそのメールを携帯に転送してくれ」
そうなのだ。メールはボーダーを越えているのある。
@ @ @ @ @ @ @ @ @ @
09:17 「MONTAUK行」の電車が15分遅れて到着である。
一安心したのでCDを取り出し「Jack Johnson」を流す。あま
り速くない電車の窓から覗く流れる景色と音楽がマッチする。
森・森・森・沼・田園・別荘・田園・森・・・
そんな景色が流れていく。
http://www.jackjohnsonmusic.com/
ようやく旅らしくなってきた。しかし長い。到着予定は10:52
だから、後2時間近く揺られる計算だ。
高級避暑地らしく立派な別荘が点在しているHamptonを
West Hampton
Hampton Bays
South Hampton
Bridge Hampton
East Hampton
と抜ける。アメリカでワインと言えばナパが有名だが、この辺
りでも葡萄の栽培が盛んでワインも作られている。
収穫の時期にはワインの感謝祭や品評会も開催されて賑やかに
なるそうだ。帰りには忘れずにゲットしよう。
@ @ @ @ @ @ @ @ @ @
11:05 予定より13分遅れてようやくMONTAUKに到着した。
ここがNYの最東端である。レールもここで尽きている。
もちろん改札は無い。チケットの販売施設も待合施設も無い。
表情の無いグレーで重たい雲が太陽を遮り空を覆っている。
海風が吹いて寒いんだけど雲が流れている感じさえわからない。
マンハッタンの雲は流れるのが早くて上空は風が強いんだなぁな
んてプロゴルファー猿のような感想を持った。
モントークといえば、灯台である。歩いていける距離ではない
しバスもなさそうなのでタクシーを借り切ることにする。
まず灯台に行って、その後はオールドモントークにあるリゾー
トを今後のために見学して、ついで海岸で写真をとって後はワイ
ンを買いたいと伝える。
交渉すると料金は90$。約2時間のチャーター料である。
灯台までは意外に遠くて車で15分は走っただろうか?
@ @ @ @ @ @ @ @ @ @
なんかアイルランドの果てに来ている錯覚を感じる。それほど
NYの感じが少しも無い。寂しいのである。色が無いのである。
灯台の一階部分はちょっとした記念館になっている。
お土産も充実している。
お約束なので狭い螺旋階段で灯台をのぼる。思ったより長い
「フーなんてこった」太ももが乳酸でパンパンだよ。
これで灯台からの眺めが良いなら少しは慰められるのだろうが
色が無い。景色が意外と絵にならない。
ダイナミックさで言えば冬の日本海の方が絵になる。
@ @ @ @ @ @ @ @ @ @
リゾートのあるオールドモントーク地区にある「パノラミック
・ヴュ・ホテル」を訪ねる。このエリアにはペンションのような
小さな施設が数十件、別荘をあわせると数百件の規模で点在して
いるようだ。
オンシーズンの夏はきっと活況なんだろう。でも今は完全なオ
フシーズン。
寂しい。寂しすぎる。観光客のいない観光地ほど寂しい場所は
無い。
ホテルをぐるり一周する。おいおいネットの情報とはずいぶん
差があるじゃないか?なんだよこの小さいプールは?日本でもよ
くあることだけど実物と写真の差があればあるほど騙された感が
強い。
http://www.panoramicview.com/
かなり古い水色のボルボが停まっていたのでパシャリ。
@ @ @ @ @ @ @ @ @ @
近くの海岸で降ろしてもらう。
車一台分の幅の入り口を10メートルほど進むと、目の前に
これまたグレーな砂浜が開けた。
ザパ~ン。
かなり日本海である。
「おふくろさんよおふくろさん・・・」森進一でござる。
せめて空にもうちょい表情があればな。曇ってていいんだけど
光が無いんだよね。
きっと夏はそれなりのビーチなんだろうね。でもカリブ海には
敵うはずも無い。海が目当てなら沖縄がベストだ。
もうココに来ること無いだろうな。
@ @ @ @ @ @ @ @ @ @
12:40 駅近くのパブでランチ。
ロブスターケーキとチキンラップとハイネケンを注文。
店主はハロウィンの飾りつけに忙しく。かなり本気で店内を飾り
付けている。ロブスターケーキとは母親の手料理のようなもんで
ようはロブスター入りコロッケのようなもんだ。
粉っぽい。期待せずに食べることをお勧めする。
4件隣の酒屋でハンプトン産の白ワインを購入。
携帯電話で時間を確認する。電車まであと2時間もある。
仕方なく不動産屋で物件の値段を確認する。高い。最低の物件
で億である。もちろんプール付であるが・・・。
大分・佐賀あたりの山にある別荘の方が安くていいぞ。
アメックスのコンシェルジェデスクに電話。
「モントークまでヘリをチャーターしたいんですが?」
「ヘリコプターですか?」怪訝そうなお姉さんの声だ。お前本気
で行ってんのか?面倒な客だとさぞ思っているのだろう。
「はい。今すぐなんですが・マンハッタンに急ぎ戻りたくて」
「はぁ、急に言われましても・・・予算は」
「10万くらいですか?」
「いえ、その金額では、倍は掛かると思いますが、確認しましょ
うか?」
さすがアメックスとりあえず確認はするようだ。冷やかしの客
まる出しである。
お姉さん英語が堪能なようなので、英会話をレクチャー頂く。
ホテルロビーに電話をして
「すみません。僕の友達がロビーに来ていると思うんですが
電話口に呼び出してもらえますか?彼と話がしたいのです」
My Frend shoud be at hotel Lobby.
Would You Please Put him on the phone.
I would like to do talk to him
とこんな感じである。16時になったら電車の中からホテルに電話
しよう。
DNYD4 2/2に続く