525-バングラ5

 僕らはSTCの芝の貼られた広い中庭にあぐらで腰をおろし
お互いの近況を話した。もちろん中心は黒田が行ったバングラで
の活動だ。

 

 たくさんの出会いと刺激で彼のセンスは拡大されとても多くの
事に気がつきそして心を痛めていた。

 たとえばストリートチルドレンの問題ひとつとってみても状況
は極めて酷い。暴力に病気そして教育に奴隷的労働。資本主義で
ありながら基本的なチャンスさえ与えられていない環境など左脳
的な理由はあげればきりが無い。

 ただ思うのは、この状況を野放しにしている政府や国民。また
この大学に通える裕福な学生の無関心さ、ようは人間としての尊
厳や倫理の問題だろう。なにせこの中庭に4時間以上も寄り添っ
ているカップルがたくさんいる。塀の外には存在しない世界だ。

 黒田の話では、日本人でストリートチルドレンへの炊き出しや
里親制度を使っての支援などをやっている男性がいるそうで、も
し時間があえばあうといいと薦められた。

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 ベンガル人の食事タイムは日本とは違いお昼は14時頃で夜は
21時頃だというわけで、遅い食事の前に、シェラトンの1階に
あるカフェでお茶をする。

 僕ら以外に黒田の親友のベンガル人2人(サイフンとインブラン)
このホテル珈琲が一杯200タカつまり街の100倍である。

 黒田はベンガル人の行動のいくつか教えてくれた。そのひとつ
 
「こっちはね男同士なのによく手をつなぐんだ」

「えっ?」

「ゲイじゃないよ。座ってても体の一部が触れてるとかね。安心
するんだって・・・ベンガル特有のコミュニケーションなんだ」

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 僕は本日撮影した写真を披露するため、部屋にパソコンをとり
にもどる。すると

「あれっ?隣の部屋だったんだ」空港で一緒だったゆうじである

「下に黒田さん来てるからもし時間あれば合流しない?」

「もちろん」

そんなわけで彼も合流である。

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 遅めの晩飯は観光客はまず入らないベンガル料理の店。
 店内は暗い。日本で言えばショットバーの暗さだ。
 
 四角のテーブルに5人が座る

 ベンガル人の1人が適当にオーダーする。

 この国はイスラム圏なので酒はない。

 まずライスだけが盛られた皿が出て、それぞれの皿に必要な分
だけスプーンで移す。そこからは右手の登場だ。

 ライスだけが盛られた皿を食べるだけでもなく、子供の砂遊び
のように手ですくってはパラパラと皿に落とす。

「飯は手で食ったほうが美味いよ」黒田は手の感覚で料理を感じ
るんだとも説明した。

「それに早くたくさん食べたいときはスプーンより便利がいい」

 僕は苦笑いをした。

 続々とチキンに魚に野菜のカレーがサービスされた。おのおの
の料理は店内の暗さも手伝ってか危険な信号を出しているように
僕は感じた。

「とても美味そうには見えない」大丈夫だろうか。いや・・・

 しかし僕1人食べないわけにはいかない。隣のゆうじはパクパ
クと食べはじめ「岡崎さん美味いですよ」といって笑顔を向けた

 僕も一口スプーンでチキンカレーをすくいライスに混ぜて食べ
た。

「・・・」いわゆるインド人が日本でやってるカレーの味だ。
不味くはない。どちらかと言えば美味いのだろう。

 他のカレーもひと通り試してみる。

「混ぜると美味いよ」そのアドバイスも試す。たしかに・・・

 しかしこの汚さである。食欲は腸が飛び出すホラー映画を見終
わったレベルだ。それでもがんばって胃に押し込む。

 生のサラダは遠慮する。

 最後は甘い炭酸ジュースで終わり。酒が飲めないので甘党なの
だろうか・・・僕はそんな事を考えた。

 ホテルに戻ると23時をこえていた。

  2006年03月18日   岡崎 太郎