僕らはSTCの芝の貼られた広い中庭にあぐらで腰をおろし
お互いの近況を話した。もちろん中心は黒田が行ったバングラで
の活動だ。
たくさんの出会いと刺激で彼のセンスは拡大されとても多くの
事に気がつきそして心を痛めていた。
たとえばストリートチルドレンの問題ひとつとってみても状況
は極めて酷い。暴力に病気そして教育に奴隷的労働。資本主義で
ありながら基本的なチャンスさえ与えられていない環境など左脳
的な理由はあげればきりが無い。
ただ思うのは、この状況を野放しにしている政府や国民。また
この大学に通える裕福な学生の無関心さ、ようは人間としての尊
厳や倫理の問題だろう。なにせこの中庭に4時間以上も寄り添っ
ているカップルがたくさんいる。塀の外には存在しない世界だ。
黒田の話では、日本人でストリートチルドレンへの炊き出しや
里親制度を使っての支援などをやっている男性がいるそうで、も
し時間があえばあうといいと薦められた。
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ベンガル人の食事タイムは日本とは違いお昼は14時頃で夜は
21時頃だというわけで、遅い食事の前に、シェラトンの1階に
あるカフェでお茶をする。
僕ら以外に黒田の親友のベンガル人2人(サイフンとインブラン)
このホテル珈琲が一杯200タカつまり街の100倍である。
黒田はベンガル人の行動のいくつか教えてくれた。そのひとつ
「こっちはね男同士なのによく手をつなぐんだ」
「えっ?」
「ゲイじゃないよ。座ってても体の一部が触れてるとかね。安心
するんだって・・・ベンガル特有のコミュニケーションなんだ」
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僕は本日撮影した写真を披露するため、部屋にパソコンをとり
にもどる。すると
「あれっ?隣の部屋だったんだ」空港で一緒だったゆうじである
「下に黒田さん来てるからもし時間あれば合流しない?」
「もちろん」
そんなわけで彼も合流である。
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遅めの晩飯は観光客はまず入らないベンガル料理の店。
店内は暗い。日本で言えばショットバーの暗さだ。
四角のテーブルに5人が座る
ベンガル人の1人が適当にオーダーする。
この国はイスラム圏なので酒はない。
まずライスだけが盛られた皿が出て、それぞれの皿に必要な分
だけスプーンで移す。そこからは右手の登場だ。
ライスだけが盛られた皿を食べるだけでもなく、子供の砂遊び
のように手ですくってはパラパラと皿に落とす。
「飯は手で食ったほうが美味いよ」黒田は手の感覚で料理を感じ
るんだとも説明した。
「それに早くたくさん食べたいときはスプーンより便利がいい」
僕は苦笑いをした。
続々とチキンに魚に野菜のカレーがサービスされた。おのおの
の料理は店内の暗さも手伝ってか危険な信号を出しているように
僕は感じた。
「とても美味そうには見えない」大丈夫だろうか。いや・・・
しかし僕1人食べないわけにはいかない。隣のゆうじはパクパ
クと食べはじめ「岡崎さん美味いですよ」といって笑顔を向けた
僕も一口スプーンでチキンカレーをすくいライスに混ぜて食べ
た。
「・・・」いわゆるインド人が日本でやってるカレーの味だ。
不味くはない。どちらかと言えば美味いのだろう。
他のカレーもひと通り試してみる。
「混ぜると美味いよ」そのアドバイスも試す。たしかに・・・
しかしこの汚さである。食欲は腸が飛び出すホラー映画を見終
わったレベルだ。それでもがんばって胃に押し込む。
生のサラダは遠慮する。
最後は甘い炭酸ジュースで終わり。酒が飲めないので甘党なの
だろうか・・・僕はそんな事を考えた。
ホテルに戻ると23時をこえていた。