528-バングラ8

 

バングラ3日目。

 朝10時から昨日のタクシーを使って幸田さんとお友達の緒方
さんと一緒に観光する。

 

 まずはダッカ一番の観光名所、ショドルガットへ。ガットは港
という意味。ブリガンガ川にいくつも点在するダッカ市内最大の
港。

 今日も渋滞が酷いドライバーは絶えずクラクションでリキシャ
を攻撃しながら急発進と急ブレーキで進んだ。

 バザールを抜けた先にショドルガットの入り口があって、そこ
で僕らは車を降り3タカの入場券を買って港の中に潜りこんだ。

 ドブの臭いがねっとりとした熱気に絡まり鼻をつく。

「くさい。水が腐ってるんだ」

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 川とは思えない川幅に見合うような大型の船に手こぎの木製ボ
ート。船からは大量の人間や青いバナナが排出されている。

 そのまわりには果物や野菜を売る露天。

 とにかく人・人・人。

 その大群が僕らに寄ってくる。

 バングラデシュでは観光客がほとんどいないそうで異国人を見
つけると寄って来て、もの珍しそうにグルリ取り囲む。

 危害は加えないようなので僕はおもむろにカメラを構える。

 おかげでさらに囲まれる。まるで押しくら饅頭だ。

 「オレを撮ってくれ!ジャポン!」
 そういって勝手にポーズを決める。

 パシャリ。

 どうしようも無く貧乏だが目に力がある。なぜだ?

 港の端から端まで17mmの広角レンズで撮影していく。突端
のところで裸の子供が寄って来て「川に飛び込むから撮れ」と言
う。

 次々に水面まで2メートルの高さをバク転で子供が飛び込む。
僕は連写でその一部始終を撮った。しかしこの水の汚さ・・・
まるで原油のように真っ黒だ。

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 ショドルガットからちょっとだけ離れたシャカリバザールに移
動する。このバザールは通称ヒンドゥーストリートと呼ばれてい
てイスラム圏の中にあるマイノリティーエリアだ。

 後から知ったのだが、ちょうどヒンドゥーの祭りが行われてい
て通りはいつも以上の賑わいだった。

 僕は通りに面して連なる間口1メートルほどの店を撮影した。

 カレーのスパイスを潰すための石のまな板を作って売る店。伝
統的な楽器を作る店・ヒンドゥーの飾りや神様の像を粘度で作る
店・床屋に八百屋に銀細工。なんの統一性もない店が延々と続い
ている。

 ここでも人々はカメラが大好きだ。カメラを向けると最高の笑
顔でポーズを決める。ベンガル人は男女共に堀が深く瞳が大きく
まつ毛が長い。しかも額には赤や緑といった色粉を塗っていて写
真映りがとてもいい。ただ年頃の女の子は恥ずかしいのかカメラ
を向けるとプイッと逃げてしまう。

 リキシャ一台がやっとの道幅の通りから、さらに狭い通りに曲
がる。銀細工の店がずらりと並ぶ。犬も額に赤い色粉を塗られて
いる。僕が写真を撮っていると1人のおじさんが笑いながら近づ
き僕の額と頬に赤い粉を塗りつけた。

 僕は祝福されたのだろうか?

 幸田さんも緒方さんを振り返ると額を赤く染めていた。

 このストリートでは細工の細かい銀製の腕輪を2つ購入した。

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 遅めのランチ。

 ダッカで一番近代的なデパートの最上階にあるベンガル風ファ
ーストフードの店に行く。同じ階には映画館がある。
 
 近代的と言ってもそれは建物だけで、店の並び方は日本の田舎
にある商店街のそれに近い。

「あっドミノピザがあるじゃん!」僕は声をあげた。

すると緒方さんが「岡崎さんよく見て」と言う。

「えっ?」僕は看板を読み直した。なるほど・・・
看板はドミノーズピザとなっていた(苦笑)

 チキンバーガーを食べマウンテンデューを飲んだ。
なかなか美味しい。

 しかし観光はここでタイムアップ。渋滞のおかげで中々予定通
りには動けなかったことが理由だ。とにかく全てが非効率。

 僕は彼女たちを黒田に紹介するべくTSCに移動した。

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 今日は個展の最終日。18時から全員で作品を撤去した。

 ダッカ大学で絵を勉強しに来ている「たけし」も合流。

 ささやかながら4人で黒田さんのお疲れさん会をシェラトンの
レストランで・・・なにせここは酒が飲める。

 腹いっぱい西洋の食事に舌鼓をうち、その後僕の部屋で話をし
た。バングラ最後の夜。日本からの距離よりも精神的に遠いこの
国で日本人4人が集う。

 話は尽きない。

 気がつくと時計は3時をまわった。 

 
  2006年03月22日   岡崎 太郎