26日キューバ3日目 朝。
ホテルで朝食。普通に美味しい。オムレツをおかわり。
部屋に戻ると内線が鳴った。
河出書房のH氏から紹介されていたキューバ在住の女性から
である。
「あら?岡崎さん」
「そうです。もしかしてAさんですか?」
「はい。そうですよ!」
「よかった。もう会えないかと半分諦めてました」
実はキューバに入国してから持ち込んだノートPCをネットに
接続できないもんで彼女と連絡が取れなくて困っていたのだ。
昨晩、H氏に国際電話で事情を説明し僕のホテルと部屋番号を
伝えていたのだが、どうやらメッセージが伝わったようだ。
「ロビーですか?今回はどうもすみませんでした。すぐに降りて
いきます」シャワーでも浴びようかと考えていた途中だったが、
僕はすぐに準備をしてロビーへ降りた。
「どうもはじめまして」簡単に挨拶を済ましロビー奥にあるバー
に腰をおろした。
彼女はキューバ危機後の一番大変だった時期から約10年この国
に住んでいて日本人としては最強クラスのキューバ通だ。
「飢餓寸前だった時もキューバ人は笑っていたのよ」と彼女はマ
ザーテレサのような博愛の笑みを作った。話は自然とキューバの
現状からカストロ議長の容態、その後のおおまかな体制予想。
そしてキューバ、ベネズエラを筆頭に進むラテンアメリカの左翼
傾向と広がった。
もちろん有機農業についても現在もっとも新しい話を聞くこと
ができた。今回キューバ行きのきっかけになった吉田太郎氏とも
彼女は懇意で何度も会っているそうだ。それは初耳である。
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「現在どのくらいの日本人がキューバに在住しているんですか?」
「そうね、移民の二世や三世と短期留学生を除けば30名弱じゃな
いかしら」
「では京都の舞妓さんと同じくらいですね」
「・・・」
渾身のトークのつもりだったのだが・・・。
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あっという間に時間は過ぎた。11時にエンリケが迎えにくるの
だ。もっと彼女から情報を聞きたかったのだが・・・。
おっと、最後に彼女から重要な情報をもらった。
「葉巻だけど、アメリカ入国よりも、キューバ出国時の検査で
没収される危険があるけれど、あなたの葉巻は大丈夫?」
と言うのだ。
「えっ?僕の葉巻ですか・・・」
「そうレシートは貰ってる?」
「いえ」僕は小さくなった。
葉巻はもっとも外貨を稼ぐ輸出品目の稼ぎ頭なわけで、粗悪品
が出回るなど言語道断でキューバの面目に関わる話だ。
「とにかく箱は駄目ね。バラで小分けして持ち込むしかないわ」
彼女の目は、ちゃんと正規品を買わないからよと言っていた。
仕方ない。キューバにいる間に少しでも自己消費しよう。