先日たまたま若手スタッフと2人で食事に行った時のことだ。
「こんな美味しい食事が食べれてラッキーです。今日のよかった出来事に記録
します!」
「あはは。それはよかったね」
確かに、若い時分のタダ飯はありがたいだろう。しかし『よかったと感じて
いる部分は』そんな表面的なことだけではない。
「自分が、どういうパターンでよかったと感じてるかを理解している?」僕は
彼に少し意地悪な質問をした。
「どういう意味ですか・・・」スタッフは首を傾げ口を尖らせた。
「グルーピングは毎月してるんだよね」
「はい、最近ちょっとサボり気味ですが、よかった出来事だけは月末にまとめ
るようにしています」
「それは素晴らしい。じゃあ少し思い出して欲しいんだけど、グルーピングし
ている時に気がつかない?
へぇ俺ってこんな事で『よかった』って感じるんだ・・・って感じ」
スタッフは少し考え口を開いた。
「確かに・・・あります。些細なことで喜んだり」
「人間ってのは感情の動物と言われるほど、心が揺れる」僕は小船に見立てた
右手を動かし荒波に揺れるさまを表し話を続けた。
「つまり気分がいい時と落ち込んでる時では、よかったのキャッチ率が違うん
だ。同じ事柄でも、受け取る時、その時の自分のテンションで感じ方がかわっ
てしまう」
「なるほど」
「だから自分のよかったを感じるパターンを見つけておくと、感情に左右され
にくくなる。もちろん影響はうけるけどね」
「パターンですか?」
「ルールでもプログラムでもスイッチでも法則でも仕組みでも言葉はなんでも
いい、どういう事柄がおきたら、よかったと感じるかを定義して顕在化させる
ことさ」
「なんだか難しいですね」
「難しくないよ。たとえば、今日このレストランで感じているよかったに話を
戻そう。さっき美味しい食事が食べれてラッキーって言ったけれど、それだけ
じゃないよね少し考えて見て・・・」
「はい」
「僕と2人でこうして話すのって久しぶりだよね」
「はい」
「どう感じてる?」
「どうって・・・嬉しいですよ。コミュニケーションがとれてるっていうか
・・・」
「そうだね」僕が頷いて応えた。「コミュニケーションがとれてるって事は
嬉しい。つまりよかったって感じる事柄じゃない?」
「なるほど。そうですね」
「他にはない?」
「えーと、僕だけが誘われたって事でしょうか・・・」
「あはは、そうだね。自分が選ばれたっていう事は嬉しいよね」
「はい。ちゃんと大切にされてるんだと感じます。それから前回この店に連れ
て来られたときは敷居の高い店だなぁと感じていたのですが、今日は少し余裕
が持ててます。それって自分も少しは成長したのかなって」
「あはは、自分の成長を感じた時って事かぁ。うん。いいポイントに気がつい
たね」
「そうですか・・・なんだか誉めてもらって嬉しいです」スタッフは照れ笑い
を浮かべた。
「ほら。誉めてもらうってやっぱり嬉しいコトだよね」
「あっ」
「何かわかった?」
「はい。誉めてもらうって事もパターンなんですね」
「そういうコト。
じゃあ少し話を整理してみよう。表面的にはタダ飯が食べれるコトと思っち
ゃうけれど、実は複数の要素がある事がわかったかな?」
「はい。
自分が選ばれたコト。
コミュニケーションがとれたコト。
自分が成長したコト。
自分が大切にされているコト。
誉められたコト ですね」
「そう。要素が絡み合ってるんだ。潜在的にはもちろん心ではわかっているん
だけどね。
とにかく自分のパターンを知ることが先決。パターンを知れば行動は自然と
変わってくる。だってよかった事を感じるのはそれ自体が嬉しいコトだし楽し
いコトだから、自分から身体が動くようになるんだ」
「求めるってコトなんですね。少しだけわかった気がします」
「それはよかったね」
「自分のパターンがわかれば、相手のパターンも見えてくる。そういうコトで
すよね」
「おおおお!素晴らしい。何か悟ったようだね」