615-2007年

年末ある著名な方とお会いした際の話題だ。

「白熊が氷の穴で溺れている映像見た?」


(朝のテレビで世界的に有名な写真家の岩合光昭氏による、温暖化で氷が薄
くなり、熊の体重で氷が割れてしまい這い上がれずに海で溺れる様子の映像
や、沈没の危機に瀕したキリバス共和国の映像など、刻々と悪化する温暖化
の現状が紹介されていた。なにせキリバス共和国の平均海抜は約1.5メートル
しかないのだ。モルディブも沈むと言われている)

「米国立大気研究センターが発表した、このまま温暖化がすすむと34年後に
は北極の氷が消えるというレポートは聞いた?」

「ねぇ大氷河が崩落しているのは知ってる?」

 日本にいると気にならないが、どうやらもの凄い勢いで融けだしているら
しい。岩合さんのレポートでは日中20度を超す日が続くそうだ。もちろん夏
だが、あの極寒の北極が・・・ちょっと信じられない。冬がその分寒いなら
いいのだろうが冬も暖かくなっていて氷が厚くなりきれないそうだ。

「氷がとけると真水が増えて塩分濃度が変わるでしょ、すると海流が変化す
るから異常気象がおこる・・・」

「あっ映画デイアフタートゥモローですね」

 つまり海面が上昇するだけでは済まないのだ。

「二酸化炭素が原因なんだよね」
「京都議定書の後ってどうなってるの?」
 問題は解決の方向に向っているのだろうか?

 温室効果ガス排出量世界一のアメリカ、そして二位の大国中国は一体何を
考えているのだろうか?

 どうやら知らないことばかりであることを痛感した。

 猪年の今年。猪突猛進で景気は上向きだ。そんな議論も結構だけど、地球
がなくなっちまったら元も子もない。

 それにしても環境破壊というテーマは切迫感がない。
 危機が目の前に迫らないと人間は動けないのだろうか?

 個人の感じる将来の曖昧で漠然とした不安の対処も同じだが
 まず広く深く「考える」こと。(調べる・学ぶ・思案)どんな選択肢があ
るのか?最悪のシナリオを考えること。

 そして自分1人で出来ることから実践、行動することが大切だ。

 まだ大丈夫さ。

 僕もそう楽観したい。しかし知らないでは済まされない状況まで、問題は
悪化してしまっているのではないだろうか?

 中国でマグロが流行したので、漁獲高が制限され価格が高騰しているそう
だが、間違ってもマグロだけの問題ではない。食料とエネルギー。この2つ
が原因となってすすむ土壌と空気の汚染が裏に隠れている。

 代替燃料として注目されるバイオマス燃料(バイオマスエタノール)にし
ても、化石燃料を燃やすよりは環境に優しいそうだが燃やせば二酸化炭素が
排出されることに変わりは無い。実際はどうなのだろう。

 土壌のエネルギーを使い植物を育てるわけで、地球の養分をそれだけ消費
していることを忘れてはいないか?

 地球の資源は無料ではない。皮肉なことに原料である食料用穀物の価格が
高騰しているそうだ。しかし所詮、オイル価格の高低で揺れてるだけではと
疑いたくなる。

 これからインドや中国、それに続く途上国が急激な経済発展を遂げるのは
明らかだ。日本やアメリカを見習うが如く自動車が普及し、高度な生活を求
め電気を貪り、その電気を作るために今以上に燃料を燃やすだろう。

 その活動を支えるほど地球に余力があるのだろうか?

 伊坂幸太郎の小説「終末のフール」のように、地球の滅亡まで後一年と宣
言されないと動けないものなのだろうか?

 残された時間は意外と短いのかも知れない。精一杯毎日を生きることも
1つの解ではあるが、何かできることを探す道を諦めてはいけない。

 問題は、人間の生活を楽にするために行う活動を最優先にするという考え
方を改める時期であるのだ。無関心は一番の悪である。

 

  2007年01月05日   岡崎 太郎