624-不のつくコト

不具合・不都合・不安・不便・不合理・不要(不用)・不細工・不味い・
と不のつく言葉は多い。


世の中のアイデアの大半は、この不を転換させたいという欲求によって
生み出される。

 道具であれば、基本的なことを磨き、この不を払拭しているモノが使い易
いことは言うまでもない。

 程度の差はあれ改善という範疇のアイデアなのだが、この不に対応した
ルールを収集し、商品開発またはサービスに活かすことを企業は考えるべき
だ。

 間違いは繰り返される。

 先日2つ折の財布を買ったのだが、札入れのサイズが狭い上に、縫い返し
の部分が一部邪魔になって納まりが悪い。2つ折を繰り返していると札が飛
び出てきてしまうのだ。

 表の質感やデザインがいくらよくても、お札を収納するという基本が出来
ないとなると、意味は完全にない。


 吉田カバンの直営ショップに寄った。

 そういえば、学生の頃、吉田カバンのポーターシリーズの財布を(ナイロ
ン製の2つ折で表にコインケースがついているベーシックな奴)よく使って
いた。

 その財布とほぼ同じデザインで表地がデニムになってる財布を発見し手に
とった。

 瞬間に違和感を感じた。

「あれっ?開く方向が違うぞ」

 僕は隣に置いてあったオリジナルを手にとって同じように開けた。

「逆だ」

 これは信じられない。小銭を出した後、札を出そうとすると下を向いてし
まう。上下を確認して使えばいいのかも知れないが・・・

 右利き用のハサミを左利きの人間が使えないのと同じ理屈だ。

 しかも札入れの仕切りがない。一万円とそれ以外の札(千円と5千円)を
わけて収納したいじゃないか!
 
 まず確固としたお金に対しての考え方が、分別収納を生んだわけだ。
(便利という以外に、一万円への敬意なのだ)

 お金への敬意を失くしたのか?どうした吉田カバン。

 財布の基本要件を満たすための製品仕様や作業上守るべきこと。
 きっとたくさんあるはずだ。

 そのひとつひとつを守る視点が薄くなってきているのか?

 

  2007年01月31日   岡崎 太郎