次は「体験」のジャンル。
「この項目は広いなぁ。他の項目ともかぶるんじゃないか?」
「重複しても別に問題はないだろう。「やりたい」が明確になればそれでい
いんだからさ」僕は応えた。
「海外旅行って体験の最たるもんだと思うけど。ちなみにお前は何処に行き
たい?」
「行きたい国はいっぱいあるよ。たしか認定されている独立国って最近ひと
つ増えて194ケ国あるはずだ。だから年間10ケ国まわって20年だ。漠
然とだが、まずヨーロッパ横断だと考えている。それからアフリカとラテン
アメリカは手付かずだからぜひとも行ってみたい。このエリアは日本にいる
とテロや貧困みたいな話しか入ってこないけど、間違いなく人間の営みがあ
るはずだからね」
「俺は年に1回くらいはカリブのリゾートで心の洗濯と行きたいねメキシコ
のカンクンやアカプルコ。ジャマイカのモンテゴベイ。バハマにハバナ。白
い砂浜にエメラルドグリーンな海。そして美女と酒と音楽」
「まぁそういうのもいいけど、その旅先で何を体験するかだよね。アマゾン
川をカヌーでわたるとか、原住民に混じってバンジージャンプするだとか、
フランスでとびっきりの恋に落ちるとか」
「少し怖い目に会うなんてのはどうだ?」山本の一言で去年訪れたマンハッ
タンのリトルイタリーでの一件を思い出した。
なにげにカメラを構えたら、「お前何を勝手に写真を撮っているんだ」と
激怒した黒人に追いかけられた。
過ぎてみれば、話のネタとしては秀逸だが・・・。
「他人と同じ体験だけじゃつまんないもんな」山本が続ける。
「そういえば、先日馬に乗ったんだ」
僕は急に思い出して沖縄で馬に乗った話を持ち出した。
「馬?」山本が訝しげに僕を見る。
「ああ馬だ。正直、動物園でポニーの引き馬に乗って以来だったんだが、簡
単な講義の後、4時間のトレッキング最後は砂浜で鞍を外して馬と一緒に海
へドボンだ」
「へぇ驚いたなぁ。まったくの素人がか」
「ああ沖縄の大自然を満喫できたよ。いい体験だった」
「おもしろそうだな」
(1)行ってみたい場所(海外・国内)
(2)手にいれたい名声や賞
(3)住んでみたい場所(海外・国内)
(4)やってみたい趣味や経験や気持ち
(5)褒められたいこと
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「仕事」のジャンル。
「これは今の延長線上で考えると詰まるなぁ。うちは同族経営だから昇進に
も限界があるしさ」山本の口振りは淡々としていたが、将来の閉塞感からか
切れのない口調だ。
「転職するとしたら、どんな会社?どこかイメージあるの」
「外資系かな。やっぱアクティブでおもしろそうだろ。月に一度の本社会議
に出るんだが、もちろん飛行機はビジネスクラスで金髪のキャサリンと黒髪
のジョディも同行する。2人は俺専属の優秀な秘書だ」ケタケタと山本が笑
う。
「お前ってそんなに英語堪能だったか?」
「言葉なんて死ぬ気になればマスターできるさ。お前はどうだ?」
「実は会社で働き続けるイメージはないんだ」僕は山本が理解できるか様子
を伺った。
「個人でフリーにやるってことか?」
「ちょっと違う」
「じゃあなんだよ」
「言葉にするのは難しいなぁ」僕は頭を掻いた。
「報酬と仕事を一旦切り離して、何がやりたいのかだけをシンプルに考える
と今やってる仕事の延長線上とは違うイメージしか浮かばないんだ。でもそ
の仕事で稼げる印象がまったく湧かない」
「稼ぎやすい仕事とそうじゃない仕事があるからな」
「ああ」僕は笑って応えた。
「やりたい仕事で稼げれば最高なんだろうがな」
「ああ」
仕事ジャンルの質問はこんな感じになった。
(1)働いてみたい会社のリストアップ
(2)後世に残る仕事をイメージする
(3)多くの人に必要な仕事をイメージする。
(4)何歳まで働くのか?
(5)一旦、報酬と切り離してやりたい仕事をイメージする
「自分」というジャンルが最後に残った。