「自分」というジャンルが最後に残った。
「最終的はにはこれか・・・」山本が漏らす。
「人生の最後の最後で、俺はどんな時間を過ごし家族に仲間に社会にどんな
よい影響を与えたかが問われるのかも知れない」僕は言葉を絞り出した。
「あいつは嘘つきで金に汚くていつも人を裏切ってきたからな、なんて言わ
れるのは嫌だもんな」
「ああ嘘つき呼ばわりされるのはゴメンだ」
「自分の信条だろう。いくら稼いだかが人間の価値ではないはずだ。つい惑
わされがちだけど・・・」
「まぁ資本主義の蔓延した社会だから仕方がないんだろう」僕は応える。
(1)どんな人間になりたいかを考える
(2)信頼に足る行動や発言とは
(3)人生をよりよいモノにするための習慣を身に着ける。
(4)自分の伸ばしたい能力をリストアップする
(5)明るく笑顔溢れる自分をイメージする。
(6)築きたいあるべき家庭の姿
「こんな感じか?」僕はノートに書きつけた。
とくに最後の質問は人間関係全般に言えることだと思った。
「なんだか見えてきたなぁ」山本が宙を見つめて口を開いた。
「この質問を考えることで将来像が明確になってきたよ、まだちゃんと答え
を出してないのに不思議だね」僕は応えた。
「幸せの土台って知ってるか?」
僕は山本の目を見た。
「まず健康。次に自分と家族や仲間への愛。そしてどんな時も夢を失わない
ことだ。この三つからすれば金は二の次だろう。もちろん金は無いよりあっ
た方がいい。しかし金があっても病院で寝たきりなら楽しめないだろ」
「土台か・・・そりゃそうだ」僕は深く納得した。
「シンプルに考えれば誰でもわかりそうなことなんだが・・・今日はよかっ
た。ありがとういい時間だった」山本は頭を下げた。
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エピローグ
喫茶店でのセッションから一週間が経っていた。僕は僕なりに山本は山本
なりにあの質問に答えを出した。その答えは正しいかどうかは別にして求め
る対象が定まった満足がある。
理由なく答えを先延ばしして来た中途半端な毎日がガラリと変わった。な
にせ今の自分には確信があるんだ。
「かならず実現する」そんな予感にワクワクしている。
非常識だろうが、なんだろうと、自分の描いたイメージを信じること。そ
して自分が出来ることを考え、まずは動きはじめようと決意した。駄目な環
境や現状に反目するよりずっといい。
ブルル。携帯電話がメールを受信した。
山本からだ。
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おつかれ!
結婚式の日取りが決まった。スピーチよろしく。
それからスプーン曲げも。
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了解。
僕は短く返信すると大きく息を吸い込んだ。
さて夢の実現に一歩を踏み出そう。