677-ニーズとシーズ

 そもそもどんな製品を作るのか。

 製品開発の構想・アイデアをニーズ(需要)から作っていくのか
シーズ(種)から作っていくのか・・・


 

 製品開発をする際の出発点、つまりマーケット・インなのかプロダクト・
アウトなのかである。

 90年代後半「プロダクト・アウトではもうダメだ」という主張が多かっ
た。もっと消費者の気持ちを理解し開発しなければならないという理由から
こうした主張が強かった。

 メーカーはもっと消費者のニーズを捉えようという動きだった。確かにテ
クノロジー先行の商品開発では、作り手側の一人よがりになりがちであり、
消費者の求める製品と乖離するというわけだ。

 だからこそ製品開発にはマーケットの分析から始め、消費者のニーズを理
解し開発に活かそうとするマーケット・インのすすめだった。

 ところが、この主張も行過ぎたマーケット・インによってプロダクト・ア
ウトが復権してきた。それはマーケット・イン発想ではイノベーティブな製
品は生まれにくいことがわかってきたからだ。

 しかも消費者は顕在化しているモノやサービスに対して意見は言えても、
極めて浅い見識の元に無責任な意見を言う傾向がある。

 ちなみにマーケティングリサーチが役に立たないのではなくて、その方法
に問題があるからだが・・・

 たとえばリサーチの対象にしたって、まさに今その商品を本気で買おうと
している対象に意見を聞かねばならないのは言うまでもない。そうでなけれ
ば、まったく意味の無い意見の集合になってしまう危険がある。

 つまりデマンズを忘れずに意識するということだ。

 ともかく消費者の意見をまとめつつ商品に活かす方法が向いている商品も
あれば、そうではない商品もあるわけである。

 少し整理してみよう。

 マーケット・インでは市場を調査し、それに合致する製品を企画開発して
いく簡単に流れを書くとこうなる。

(1)市場調査
(2)製品企画
(3)プロトタイプ開発
(4)評価・手直し
(5)製品製造

 反対にプロダクト・アウトでは研究開発チームが生み出したシーズを企画
チームが育て市場に問う。

(1)研究開発
(2)製品企画
(3)プロトタイプ開発
(4)評価・手直し
(5)製品製造

 こんな感じだ。

 しかし、この説明は両者の違いをわかりやすく説明したに過ぎない。実際
には市場調査とまでいかずとも、消費者の意見を全く取り入れない商品開発
などありえない。

 ニーズとシーズ。そのどちらが先なのかそれはケースバイケースだろう。
消費者の気持ちを理解し、その感覚の少し先を提案することが大切である。

 ともかくメーカーが忘れてはいけないのは、プロフェッショナルという
自負のもと、消費者が歓喜する圧倒的でサプライズな商品を開発するという
強い情熱である。

  2007年08月30日   岡崎 太郎