「行動」を起すには、意思決定が必要になります。
つまり、ひとつを選択するまでには、
情報収集>仮説の作成>仮説の検討>選択肢の作成>判断基準や条件など
「考える工程」があるのです。
もちろん、いちいちこんな事を意識して考えている人はあまりいませんね。
じつは、メニューを決めるのも、会社の方向性を決めるのも、人事考課も
このプロセスは基本的には同じです。質と量にずいぶん違いがあるだけなの
です。(実際は「パスタでいいや!」という程度でしょう)
複数の選択肢から、正しいと思われる「ひとつ」を選択すること。要約す
れば、これが意思決定なのですが、実はこの判断がなかなかの曲者です。
それは何が正しくて間違っているかの判断は、その目指す目的、目標、要
求を最大に満たすものであったかどうかに尽きるからです。
ですから反対にいえば「目指す目的、目標、要求」が明確でなければ、答
えはでないという事になります。
たとえば、デジタルカメラを購入する場合を考えてみましょう、旅行に携
帯したいので小さくて軽い製品が望みだが、夜間の撮影も可能な機能がつい
ていて、価格は4万円程度までになんて複数の要求があるとします。
すぐに条件にぴったりとマッチする製品があればラッキーですが、なぜか
要求どおりの製品はありません。次々に発売される新製品の情報をくまなく
吸い上げ、判断するのは素人には難しいことです。出発の日はもう目の前
です。
そこで、今回は購入を諦め、友達からカメラを借りるという他の新しい解
決を考えたりします。
でも条件を妥協して新しいカメラを買うという選択肢も捨てがたい。
そうなると悩みはどんどん深くなってしまいます。
このように、目的や要求が複数で、しかもタイムリミットが限られている
時は大変です。ましてデジカメよりも多くの条件が複雑に絡まる、たくさん
の経営判断、中でもリストラなどの場合、社員の生活を左右するわけですか
ら安易に判断することもできません。困ったことに、時間をかけ、たくさん
の選択肢をリストアップすればするほど、決断は難しくなってしまいます。
なにせ明快に白黒の判断ができることの方が少ないのです。
また、新入社員の採用試験で、コンピュータ分析の結果、明らかに成績も
将来性も優秀なA君が、成績も将来性もまぁまぁのB君より高い得点をマー
クしました。ところが最終的に会社は優等生のA君より、笑顔の素敵なB君
を採用することにしました。
コンピュータ分析では、A君の方がメリットが多いことは明白であっても
このように判断には、「好き・嫌い」や「自分らしさ」など判断する個人の
価値観や性格が反映されてしまいます。
ある会社で新商品のパッケージデザインを決めるコンペがあり、一流のグ
ラフィックデザイナーが、会社のコンセプトをもとに3つの提案を行いまし
た。ふたつのデザインは特徴的で、残りのひとつはよくある保守的なデザイ
ンでした。
多数決では意見が割れ、最終的な判断は社長に任され、結果、保守的なデ
ザインが採用されるという事がありました。
デザインの選択ほど、個人の好き・嫌いや嗜好がモロにでます。もちろん
消費者にブラインドテストなど行うことは有効ですが、最終的には俗人的要
素に左右されるのです。
一体何が正しいのでしょう。
戻るべきポイントは「目指す目的、目標、要求」しかありません。
保守的であれ、革新的であれ「目指す目的、目標、要求」に沿っていれば、
間違いではないのです。
ですから「目指す目的、目標、要求」、つまり「そもそも」を動かしては
いけません。立ち返る場所を失ってしまっては、それこそ本当の迷子になっ
てしまいます。