722-アフリカ紀行 No4 DAY3 20080301 ハラレ

 朝5時半に起床。少し空が明るくなってきたので一眼レフキャノン5Dを
リュックに詰めて街へ。早朝も早朝ですから人も車も疎らなわけで、これな
ら安全と踏んでのことです。


 

 それでも現地人らしき黒人がパラリ歩いています。気温は13度くらいで
ヒンヤリしていて爽やかです。足早にまずは昨日の夕方、人が溢れていたバ
スターミナルへ。周囲に万全の注意を払いつつ撮影開始。

 眼でみるよりもカメラに記録された映像は空の色も街の感じもいい感じ。
高いビルは数棟のみで後は三階程度の工場らしい建物だけです。ただアフリ
カっぽい地平線に太陽がドンという絵ではないので、撮影ポイントを探しな
がら太陽の昇る方向へ進んでいきます。

 空はどの方向もオレンジやピンクに染まりはじめ、当初東と思った方角と
反対を撮影していて振り返ると、やはり当初の方角が正しかったようで、ギ
ラリと存在感を示しつつ眩しい太陽が顔を出してきました。

 建物が邪魔しないスポットを探しつつ1キロほど進むうちに自転車や徒歩
で通勤する人が増えてきました。車はまだ少なくたまに乗り合いバスが黒煙
をあげて通りすぎます。

 中央分離帯のある片側2車線のバイパスらしき道の真ん中から一直線に伸
びる道路の先にオレンジ色で輝く朝日を狙います。アングルを変えながら調
子にのって撮影をしていると、一旦通り過ぎた黒のホンダ・インテグラが先
の交差点を折り返し僕の横でスピードを落とすと声を掛けてきました。

 嫌だなぁと思い無視して反対車線へ移動。車が通りすぎるのを確認して撮
影を再開と思ったらインテグラが少し先で方向を変え戻ってきました。

 しかたないので、また反対車線へ小走りに逃げます。
ちょうど分離帯を挟んでサークル上になっているので都合がよいのです。

 今度は大丈夫かと思っていたら、また方角を変えて戻ってくると今度は
車から降りて僕を伺っています。

 挑発しすぎたかと思いつつ500メートル位で睨み合うようなりました。
男はこちらを伺っています。車がホテルの方角にあるため、反対に歩くと逆
方向へ進むことになるので僕も動けないのです。困ったなぁと思っていると
ガードマンらしく制服を着た自転車のおっちゃんがやってきたので、その自
転車を盾にして逃げようと考案。

 おっちゃんは、きっとなんか変なアジア人だなと思いながらも、持ち前の
フレンドリーさで話掛けてきました。インテグラの男は分離帯でドアの傍に
仁王立ちをしたままです。ちょうど男を通り過ぎようとしたその時。男は道
路を渡って僕に向かって来ました。

 おいおい。まるでストーカーだなぁと思っていたら男はお尻のポケットか
ら何やらIDのようなモノを提示して近づいてきたのです。

「おいお前なぜ逃げる」男はたぶんそう言いました。
「さっきから何を撮影している」

 僕もようやく事態がつかめてきました。
 
「俺はポリスだ。ちょっと事情を聞くので車に乗れ」たぶんそう言ったと思
います。仕方なくインテグラの助手席に乗り込みます。男は再度警察である
ことをIDを提示しながら脅しなのか手錠をちらつかせました。男は私服警
官だったのです。

 眼の前から昇ってくる朝日をインテグラの中で拝むとは・・・

「お前はゼネラリストか?」
ゼネラリスト?質問の意味がわからず聞き返すとゼネラリストではなくて
ジャーナリストか?と聞かれたようなので「ツーリストで朝日を撮っていた
のだ」と答えます。

「そうか。じゃあなぜ逃げた?ランニングでもしていたのか?」
「あんたが追っかけて来るから怖いので逃げた」と正直に答えました。

 途端男は笑い出し。少し街を案内しようと行ってホテルと逆方向に走りだ
しました。緊張からなのか車内が暑いのか汗が噴出してきます。本当に大丈
夫なのでしょうか心配です。

 車はスピードを上げながらどんどん進み、住宅街の一角で止まると振り返
り「ここが俺の家だ」と男は言いました。厳重に鍵のかかったドアを開け中
に入れという仕草をします。

 うーん中に入っていいものだろうか?一瞬そう思いましたが断れる状況で
はありません。手前の大きな家の奥にとうもろこし畑がありその奥にコンク
リートで出来た真四角の棟が5つばかり見えます。

 男がひとつのドアを開けると3畳ほどの小さな部屋にベッドと小さなテレ
ビとオーブントースターが見えました。男は「リアルジンバブエ」だと現状
の悲惨さを伝えたかったようです。

 無言のまま僕は頷くと、どうやらホテルまで送ってくれるらしいので少し
安心しました。すると現金なもので途端に腹が減ってきたので一緒に飯でも
どうだと提案するとナイスアイデアだと男は笑顔を返してきました。

 ちなみに牢屋に入ったノーフードだから死んじゃうよと男が笑ったのには
笑えませんでした。男の名前はジェリー。よく見るとウィルスミス似のいい
男です。

 ホリデーズインの前にあるガソリンスタンドに併設されたピザ屋で25cm
のピザとファンタオレンジを注文しました。僕はジェリーの分も払ったので
すが、今は腹が減ってないと言いながら金だけをポケットに入れました。そ
の後ちゃっかり僕のピザを摘んでいましたが・・・。

 その後ホテルに送ってもらって時計を見ると8時15分。それにしてんも
朝から大変な目にあったものです。

  2008年03月07日   岡崎 太郎