772-レーシック

  目の手術をした。

 あっけないほど視力が回復した。0.03が1.2だ。

 目の検査で言えば、一番大きな丸の切れ目さえ判別できなかった視力が
小学校の頃にもどったことになる。

 技術の進歩は凄い。まるでSFだ。

 今年サムイ島に行った際、ジェットスキーやらジョギングなどでメガネの
不便さを痛感し、レーシックでも受けてみるかという気になったのだ。

 ネットで少し調べてみると、中には目の構造上、手術ができない場合が
あるらしいので、ともかく手術可能かどうかだけを調べるつもりで病院に
向かった。

 さて病院の選定だが、そもそも福岡には3つの病院しかない。ひとつは
大手で全国展開していて一番有名なところ。ここは検査でさえ一ヶ月待ちと
いう大盛況ぶり。もうひとつは高級な病院で一番料金が高い。
そこで消去法で残った病院を選択しすぐに電話をした。

 検査の日程を尋ねると今日でも可能ということで、すぐに検査を受けた。
 検査はそう面倒もなく一時間程度で終了し、その場で手術可能とのこと。

 流れで手術の日程もすぐに決めた。思い立ったら吉日。最悪失明なんてこ
ともないそうだし、それならとパッパッと決めた。

 手術予定日は一ヶ月後。インドから帰って一週間後。出張と出張の間に
時間を作ってトライした。

 正直怖くないかと言えば嘘になる。なにせ麻酔は点眼麻酔でつまり目薬と
いうお手軽さだ。まばたきが出来ないように物理的に目を開いたままにする
器具を取り付けるという。しかも僕は先端恐怖症だ。

 怖い。唯一の望みは手術時間が短いということだけ。
 我慢我慢。実際僕の手術時間は両眼でほんの5分程度だった。 
 
 さて当日は、朝一番東京から飛行機でもどり、荷物をもったままタクシー
で病院に入った。手術前なんだから飲み過ぎないようにと思っていたのに
しっかり深夜二時まで飲んでしまい酒が残っていた。

 最終検査をパスして、いざ手術。服装もそのままにヘアネットを耳まで被
り長椅子に腰掛け自分の順番を待った。

 僕の前に2人男性がいたが、終始無言。手術にリハーサルなどないので
大丈夫なのだろうかと心配になのだろう。僕も同じ気持ちだ。

 手術のあらましは、点眼麻酔のあと、ベッドに仰向けになる。まばたきを
出来ないように器具で固定し、眼球の表面をカンナのような機械で一枚削る
この時、目の前にあるオレンジに点灯するマーカーの光を一点に見つめる。

 目を動かさないようにと意志から伝えられるが、葬式の時に笑ってはいけ
ないのと同じで、つい動かすなと言われると動かしたくなる気がする。
 実際はまばたきをしようと筋肉は収縮するのだが、器具に阻止されてでき
ないのだ。ただ不思議とまばたきしている感じがする感覚が気持ち悪い。

 ちなみにこの皮を丸く剥くことをフラップを作るというそうだが、
この作業を機械で自動的に行うか、機械は使うが手動で行うかで、手術の
値段が違う。僕の受けた病院には手動の機械しかなかったので選択の余地は
ない。もし選べと言われたら、どっちを選択するだろう。

 少々値段が高くとも自分の目のことである。究極安全を取るのが普通だと
思う。お金には換えられない。今回僕は両眼で28万円。正直高いが、医療
保険で10万円の入院還付がもらえるので、実質18万。それにネットから
登録すれば数万円が戻る。なにこの価格で視力が戻るなら安いもんだ。

 さて皮をめくった黒目に25秒間レーザーを照射する。機械の唸る音と
少し焦げる臭いがする。そしてフラップを戻し目薬を数滴。
戻された皮は黒目に張り付いているだけ。

 これですべて終わり。

 次にもう片側を同様の手順で行う。ここまでたった5分。終わってみれば
あっという間で気が抜けた。

 手術直後でも、ぼんやりと視える。どうやら失明はしてないようだ。
別室で少し休憩したあと、先生の診断。そして5分後には病院の外へ。

 うーんお手軽すぎる。麻酔がとれるまで約一時間。少しコロコロとした感
じがあるが、痛くはない。だんだん視力が戻ってくる。すでにメガネを外し
た時よりも見えている。本も読めないのでさっさと寝る。

 翌朝起きて驚いた。見える!めっちゃ見えるではないか!
 しかも世界が少し明るくなったようだ。目のレンズの関係だろうか?

 午前中翌日の検査へ行く。
 もうこの時点ではほぼ違和感もない。

 Tシャツを脱ぐ際にメガネが邪魔にならない。
 カメラの撮影にしたって、あらゆるスポーツにしたって
 温泉にいったって!料理の最中に湯気で曇るなんてこともない。

 メガネがないというのは最高だ。
 老眼まで10年少々メガネフリーだ!

 さっそくオーバルのサングラスを調達し、所有していたメガネをすべて
度なしのレンズに入れ替えた。

 もともとポジティブでアクティブな僕だが益々ポジティブになれそうだ!

 

  2008年10月21日   岡崎 太郎