2008年1月現在・世界の核弾頭保有数を見て思った。
アメリカ4075個
ロシア 5189個
フランス 348個
イギリス 185個
中国 176個
イスラエル80個
インド推定60個
イラン 不明
北朝鮮 不明
合計約一万発の核弾頭は世界を何度破壊できる数なのだろうか。
一説には地球上の全生物を18回殺すことができるとも言われている。
なにせ今の核弾頭は当時の広島長崎の数百倍から千倍の威力があると言わ
れているのだ。
さて頭文字を並べMAD、つまり「狂っている」という意味の「相互確証
破壊」は、核を保有することで、互いが核兵器の使用を「ためらう」「ため
らわせる」ことを意図目的としている考え方だ。
ロバート・マクナマラ提唱
簡単にいえば、もし核を保有し対立する陣営のどちらかが核を使用した
なら、攻撃された相手は、確実に倍返しどころか十倍返しで報復を行います
よという恫喝であり、そのツケがこの一万発なのである。
まぁ1985年にはロシアは45000発・1965年アメリカも30000発以上を保有し
ていたから相当に削減してきているが、まだまだ充分に多い。
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/b/bb/US_and_USSR_nuclear_stockpiles.svg
状況は極めて悲観的だが
それでも核を縮小する動きは断続的にまた確実に実行されてきている。
以下は簡単な流れ
1963年8月 アメリカ・ソビエト・イギリス核実験を禁止する
部分的核実験禁止条約を締結した(地下での実験は禁止しない)
1967年2月 中南米の14か国は核兵器の実験・製造・購入・配備・使用を
禁止するラテンアメリカ核兵器禁止条約に署名
1994年1月 ブラジル・アルゼンチン・チリが追加加盟、2002年キューバが
加盟し、中南米の全33か国が加盟した。
1968年7月 国連は核兵器保有国である、アメリカ・ロシア・イギリス・
フランス・中国の5カ国以外の核兵器の保有を禁止。
核拡散防止条約を採択。
インド、パキスタン、イスラエルは未加盟。
1972年5月 アメリカとソビエトは第一次戦略兵器制限交渉を締結、
弾道弾迎撃ミサイル制限条約を締結。
1974年7月 アメリカとソビエトは弾道弾迎撃ミサイル制限条約を締結。
1979年6月 アメリカとソビエトは第二次戦略兵器制限交渉に署名。
アメリカがソビエトのアフガン侵攻を批判し無効化。
1985年6月 南太平洋の13か国は核兵器の実験・製造・購入・配備・使用を
禁止する南太平洋非核地帯条約を締結。
1987年12月 アメリカとソビエトは射程距離が5500km以下の弾道ミサイル・
巡航ミサイルと搭載する核爆弾を91年までに全廃する
中距離核戦力全廃条約を締結。
1991年7月 アメリカとソビエトは戦略核爆弾を6000発以下に削減、
地上発射弾道ミサイルと潜水艦発射弾道ミサイルと爆撃機の
合計を2001年までに1600基機以下に削減する
第一次戦略兵器削減条約を締結。
2001年に米ロ両国は相互査察により廃棄を確認した。
1993年1月 アメリカとソビエトは、戦略核爆弾を3500発以下に削減し、
核爆弾の複数弾頭化(MIRV)を禁止する
第二次戦略兵器削減条約に署名するが米ロ両国の議会が紛糾し
条約は発効していない。
1995年12月 東南アジアの10か国は核兵器の実験・製造・購入・配備・使用
を禁止する東南アジア非核地帯条約を締結。
1996年9月 国連はあらゆる場所におけるあらゆる形態の核爆発実験を禁止
する包括的核実験禁止条約を採択。
条約の発効には原子炉を保有する全ての国の加盟が望まれるも
イスラエル、イラン、インド、インドネシア、エジプト、コロ
ンビア、中国、北朝鮮は未加盟であり条約は発効せず。
2002年5月 アメリカとロシアは、配備済みの核爆弾とICBM・SLBM・爆撃機を
2012年までに1700~2200発へ削減するモスクワ条約を締結。
(ただし廃棄は義務付けず保管は容認)
2002年6月 アメリカはミサイル防衛システムを配備するため弾道弾迎撃
ミサイル制限条約を破棄。
2006年9月 中央アジア5か国は核兵器の実験・製造・購入・配備・使用を
禁止するセメイ条約を締結した。
「核兵器のない世界へ」プラハでのオバマ大統領の演説が好感される中の
北朝鮮の2回目の核実験は、オバマ方針への無謀な挑発である。
北朝鮮を擁護してきた中国やロシアまで今回だけは呆れたのか即座に
非難声明を発表しているため北朝鮮は完全に国際社会で孤立を極めている。
しかも6カ国協議は北朝鮮のボイコットにより機能停止している。
国連での決議は決まったものも、実施には様々な障壁がある。
核兵器廃絶を推進する国(日本も含む)は15年連続(94年~08年)国連
総会において核兵器廃絶決議を賛成多数で毎年採択させている。
共同提案国は59ケ国(賛成は史上最多173ケ国)ちなみに反対は
たったの4ケ国(アメリカ・インド・北朝鮮・イスラエル)棄権は6ケ国
(中国・イラン・ミャンマー・パキスタン・キューバ・ブータン)
2009年4月 オバマ大統領は合衆国大統領としてはじめて核廃絶に向けた
演説を行い、ロシアと新たな戦略兵器削減条約、包括的核実験禁止条約の
批准、核拡散防止条約の強化・首脳会議などをプラハで提唱した。
前大統領のブッシュは、冷戦時代から続いてきた抑止戦略を大幅に修正を
し「脅威に対し積極的に攻撃を仕掛けていくことで抑止する」と先制攻撃論
を発言していた。(2002年1月Nuclear Posture Review)
なんとも物騒な考え方です。
核廃絶を実現するには、米ロ両国の配備済み核兵器を他の保有国と同程度
まで削減しないと説得力さえ無いが、できれば全廃が望ましいことは子供で
もわかること。
ただし非核の国の日本は、アメリカの核の傘にいるわけで、単純に全廃に
賛成もできない事情がある。エイヤで全員が廃棄しないと無理なわけですが
そんなことはもちろん無理。
そんな中での北朝鮮の暴挙は日本がこれから核をどう考えるかに大きな
影響を持っていますね。しかしオプションとして日本が核を持つなんて
民意が許さないでしょうね。
ただしタブーとも言ってられないくらいアジアはキナ臭くなってきた。
蛇足だがブルッキング研究所が出したアメリカが核兵器を所有するコスト
が紹介されていたので引用しよう。
1940年から1996年の間、開発,実験,配備,維持で600兆円。
(アメリカは冷戦最盛期およそ5万発の核弾頭を所有していた)
単価はざっくり一発120億円。
開発技術が確立された現在では2~3000億円程度で熱核弾頭を20~30発
持てると国連レポートでは推算されている。
ただし核兵器を運搬する手段や先制核攻撃に耐える設備として敵ミサイル
の発射を感知するための早期警戒衛星や目標をセットするための偵察衛星、
また衛星防御態勢に速やかな伝達システムまで考えると費用は100倍にも
膨れあがるでしょう。しかも自前で開発となると期間も膨大に掛かりますね。
フランスの核武装自前略史でいえば
1958年・核実験を議会で承認
1960年・核実験成功
1962年・原子力潜水艦の開発スタート
1966年・水爆実験に成功
1967年・ル・ルドゥタブル級戦略原潜建造開始
1971年・一番艦就役
1974年・三番艦就役
1986年・ル・トリオンファン級戦略原潜一番艦に建造決定
1997年・一番艦就役
2004年・三番艦就役
フランスが確実な報復核戦力を自前で持つに至るまで
1958年の政治的意思決定からなんと実に46年もかかっているのです。
主要核保有国による核実験はおよそ2000回。
アメリカは1996年まで1030回(内大気中215回・地下815回)
旧ソ連 は715回(内大気中219回・地下496回)
フランスは210回(大気中50回1974年以降はすべて地下へ・地下160回)
イギリスは45回(内大気中21回・地下24回)
中国は45回(内大気中23回1980年以降すべて地下へ・地下22回)
確実な「核の戦力化」には度重なるデータが必要なのですね。
エコなんていってるこの回数・・・地球は大丈夫か?
最後に核兵器の開発技術はどういう経路で伝播したのか?
■核兵器技術の伝播状況を示すフローチャート図
http://mltr.ganriki.net/faq14n.jpg
この図によれば、アメリカとイギリスがマンハッタン計画で開発。
旧ソ連がこの情報をスパイし「長崎型原爆」を開発。スパイの一人である
クラウス・フックスが釈放後の1959年に中国にレクチャーを行い
1964年中国は「長崎型原爆」を開発。1982年中国は途上国に原爆作りの
ノウハウを広める政策決定を行いパキスタン・アルジェリア・リビア・
イランそして北朝鮮にレクチャーを行う。