807-貞観政要

 

貞観政要(じょうがんせいよう)

 という本を知っているだろうか?

 

 タイトルの「貞観」とは、西暦627年から649年まで在位し唐を支配した
皇帝 太宗(たいそう)時代の年号のこと。
また「政要」とは「政治の要諦」という意味だ。
 

 

名君と言われ理想的な統治をした太宗の帝王学のエッセンスなのだ。

 全十巻四十篇からなるこの中国の書物は、中国国内はもちろん、日本にも
平安時代にはすでに伝来していたそうで、鎌倉時代には北条政子が菅原為長
に和訳させ、日蓮もこれを書写し、江戸時代には徳川家康が鋭意学び活字版
を発刊させ普及に努めたと言われる古典である。

 アマゾンでも検索してもらうと関連本が37冊出てきます。
 ここ数ヶ月関連本を読み漁っているのだが、多くの気づきを得ている。

 今日はまず「六正」と「六邪」。
 権力者に仕える者の行動規範を戒めた内容だ。以下に紹介する。

「六正」
1)聖臣
「兆しがまだ動かず、兆候もまだ明確でない時点から、そこに明らかな存亡
の危機を発見し、未然に封じて主人を超然として尊崇の地位に立たせる
これが聖臣である」

2)良臣
「とらわれぬ、わだかまりなき心で善い行いの道に精通し主人に礼と義を
勉めさせ、優れた計りごとを進言し主人の美点を伸ばし欠点を正しく救う
これが良臣である。

3)忠臣
「朝は早く起き、夜は遅く寝て勤めに精励し、賢者の登用を進める事を
怠らず、昔の立派な行いを説いて主人を励ます、これが忠臣である」

4)智臣
「事の成功・失敗を正確に予知し、早くから危険を防ぎ救い、食い違いを
調整してその原因を除き、禍を転じて福として主人を心配させない。
これが智臣である」

5)貞臣
「節度を守り・法を尊重し・高給は辞退し・賜物は人に譲り・生活は節倹を
旨とする。これは貞臣である」

6)直臣
「国家が混乱した時、諂わずに敢えて峻厳な主人の顔をおかし、
面前でその過失を述べて諌める、これは直臣である。

反対に「六邪」という危険な従者を説いたものがある。

1)見臣
「官職に安住して高給を貪るだけで、公務に精励せず世俗に無批判に順応
し、ただただ周囲の情勢をうかがっている。これが見臣である」

2)諛臣(ゆじん)
「主人のいう事はみな結構といい、その行いはすべて立派といい、
密かに主人の好きな事を突き止めてこれを勧め、見る物・聞く物すべて
よい気持ちにさせ、やたら迎合して主人と共にただ楽しんで後害を
考えない。これ諛臣である」

3)姦臣(かんじん)
「本心は険悪邪悪なのに外面は小心で謹厳、口が上手で一見温和、
善者や賢者を妬み嫌い、自分が推挙したい者は長所を誇張して短所を隠し
失脚させたいと思う者は短所を誇張して長所を隠し、賞罰が当たらず、
命令が実行されないようにしてしまう。これが姦臣である」

4)讒臣(ざんじん)
「その知恵は自分の非をごまかすに十分であり、その弁舌は自分の主張を
通すのに十分、家の中では骨肉を離間させ朝廷では揉め事を作り出す。
これが讒臣である」

5)賊臣(ぞくじん)
権勢を思うがままにし、自分の都合のよいように基準を定め、自分中心の
派閥を作って自分を富ませ、勝手に主人の命令を曲げ、それにより自分の
地位や名誉を高める。これが賊臣である」

6)亡国の臣
佞邪を持って主人に諂い主人を不義に陥れ、仲間同士でぐるになり
主人の目を晦ませ、黒白を一緒にし是非の区別を無くし、主人の悪を
国中に広め、四方の国々まで聞こえさせる。これが亡国の臣」

 少し読みにくいかも知れないが、約1400年経過した現代であっても
中小零細企業から大企業まで、裸の王様的社長や権力者のまわりには六邪
が蔓延ってないだろうか?

 「六正と六邪」非常に整理された主張で、順番にも意味があるようだ。
 このように古典から学ぶことはとても多い。

 

  2009年06月26日   岡崎 太郎