816-パラダイムシフト

苦境はパラダイムシフトで乗り切れ


 中学生向けのセミナーを行った後のことです。

 ある男の子が「ぼく知っているよ」と生意気に話しかけてきました。

 

 そこで「なにを知っているの?」と僕が聞くと
「自分の好きなことを仕事にしたら、仕事って楽しくなるんでしょ」と
言うのです。

「何それ? だれからの情報?」と聞くと、
 彼の担任の先生がそう言ったそうです。
  
「じゃ、君は何が好きなのかい?」
「サッカー」

「じゃあさ、中二の君はサッカーが好きかもしれないけど、10年後は
もっと別のコトを好きになっているかも知れないよね。
年齢を重ねたら好きなコトって今よりもっと増えるんじゃないの?」

「ほんとだ」

「ちなみに何歳まで生きるつもり?」
「80歳かなぁ」と悩むそぶりもなしで即答してきました。

「今15歳なら、あと65年もあるよ」
「うへぇ、長いね」(おいおい君が80歳って言ったんじゃないか)

「65年の中で、好きなことは変わっていくし、好きなことだけやって
いたら飽きちゃうかもしれないよね」

「ホントだ。仕事なんかにしたら大変かも知れない!」

「大事なことは自分が嫌いなこと、イヤなこと、退屈なこと、面白くないと
思っていることを知恵と工夫で楽しいに転換していくことなんだよ。

 お金が稼げないと思ったら、どうやったら稼げるようになるか、
どうやったら短い時間でもっと効率的のよい仕事ができるようになるのか、
どうやったら自分らしい仕事ができるようになるか。

 今の君にはむずかしいかもしれないけど、そういうふうに考えるんだ。

 残念だけど『仕事』というのは、そのままでは楽しくないものなんだ。
だからこそ、自分の知恵と工夫次第で楽しくすることができる。
 君が考えているよりエキサイティングだしクリエイティブなものなんだ」

「エキサイティング? クリエイティブ?」

「そう世の中でまだ発見されてない、きっと君が発見するオリジナルの
やり方があるはずなんだ。会社に入ると、自分は広告企画がやりたいと
思っていても、営業に回されることもある。

 すると仕事が楽しくないと言い出す人が出てくる。
 自分の思い通りにいかなくて悲観する気持ちはわかるよね。

 でも営業の経験もないのに、どうして嫌だ、楽しくないと思うのかな?
 テレビで見た悪いイメージかも知れないし、先輩の愚痴を聞いたからかも
知れない。でも意外にやってみたら自分にピッタリということもあるんだ。

 ちなみに、営業という仕事はやり方次第で、非常に面白くてエキサイティ
ングでクリエイティブな仕事のひとつだと僕は思っているけどね」

「途中、むずかしくてよくわからなかったけど、思い込むことなわけ?」

「そうだね。知恵と工夫で仕事は楽しくなると単純に思い込むといいね。
そこには何の根拠もなくていい。僕を信じてみるといいね」

「わかった気がするよ」
  
 つまり、自分で勝手にパラダイムシフトするだけ。
つらいと思ったら、「いや、これはつらくない」と切り替えること。
楽しくないと思ったら「いや、これから楽しくなる」と切り替えるのです。

 根拠や理由はいりません。シンプルにただ切り替えるのです。
原因が解決してからなんて考えるのは間違いです。
待っている時間がもったいないのです。

 そんなことよりも「どのようにしたら楽しくなるのか」
「じゃあ今の仕事で、どうなれば楽しくなるのか」を考えてみるのです。
 たいていの場合、誉めてもらって悪い気分になる人はいません。
逆算すれば、「どうすれば誉めてもらえるか」を考えてみるといいのです。
  
 たとえば企画書を上司に提出する際
「とても素晴らしい企画ができました!」と元気いっぱいで提示する人と
「あまり自信がないのですが……」と俯き加減で提示するのでは上司の
反応はまるで違います。

 前者の場合は少し褒めてやろうと思うでしょうし、後者の場合、
俺のアドバイスが必要だと重箱の隅をつつきはじめます。

 楽しそうにしていると誉めてもらえる確率が高く、反対に苦しい顔を
しているときは誉めてもらえない場合が多いものです。

 知っていましたか? 

 ですから、苦しいときほど楽しそうな顔をすること、
それだけで「きみ何か楽しそうに仕事やっているよね」と言われる可能性が
出てきます。

 周りからは「なんかやる気があるなぁ」と思われるでしょう。ポイントは
態度を明るく切り替え、どうすれば、この苦しい状況を打開できるのかを
考えはじめることなのです。

  2009年10月28日   岡崎 太郎